すべての業界で“不可能がなくなる”プラットフォーム
日本マイクロソフトには今、MRを見てみたい、HoloLensを体験してみたい、という声が続々と寄せられているという。社内には、セミナーデモルームとモデルルームを作った。1日3セッションの予約が連日入っている。前出の上田氏は言う。
「みなさん、最初は怪訝そうなお顔でいらっしゃるんですが、帰るときには饒舌になられていますね。よく言われるのが、“風呂敷が広がる”です。本当にいろんなことができそうに思える。不可能なことはなくなるんじゃないか、とみなさん口を揃えておっしゃいます。バーチャル上のものが目の前でできるわけですから。ですので、この先どこまで畳むか、ということを次は考えるようになるようです」
そして、見えなかったものを見えるようにすることが、これほど気づきが多いことだと改めて知ったという声が多いという。
「お見えになるお客さまは、業種を問わないです。例えば医療関連のデモでも、MRIのデータからオブジェクトを生成しています。患者さんに病巣部分の説明をする際も、平面図よりも立体で見せたほうが説明もしやすいし、理解もしやすい。そうなると、医師と患者の間に信頼関係が生まれるだけではなく、今度は次のシチュエーションで執刀医の先生方がディスカッションもできる。全員でHoloLensを装着すれば、意見交換するときには、データを回転させたり、違う角度で見ることができます。しかも、学会で海外に行っている教授なども遠隔から入ってこられる」
物理的なディスカッションの場を用意するには、調整にけっこう時間が割かれてしまう。ところが、それが必要なくなるのだ。上田氏は言う。
「日本だけではなく、世界中のお客さまと、導入に向けたいろいろな検討をさせていただいていますが、その中で見えてきているのは、業界としては建築、不動産、製造、医療、教育、リテール、防衛などが印象に残っていますね。特に建築、製造、医療、教育といった領域は3Dデータをたくさん持っていますから、それを可視化するところで、業務の効率改善につながるという声が大きいです」
製品の設計、デザインがわかりやすいところだが、セールスやマーケティングのツールとしても考えられているという。
「あとは空間設計ですね。小売りの店舗でレイアウトを変えたり、家のリフォーム、物流の倉庫の設計、製造業のラインの機器の配置などなど。製造組み立ての現場作業でも注目されています。これまであったようなARのメガネをかけて2Dの設計図を出すというのではなく、HoloLensは3Dで見ることができる上にセンサーもついていますから、自分が作業している環境を認識して、その状況に応じた情報が出てくる。そこが、ひとつの強みです」
例えばプラントなどで、IoTセンサーをたくさん入れておいて、センサーからデータを吸い上げ、今のリアルなプラントの状況を3Dで可視化したり、シミュレーションしたりすることもできる。
また、不動産業界では、こぞってHoloLensに関心を持っているという。すでに野村不動産の「プラウドシティ越中島」では、マンションギャラリーに来た顧客にHoloLensで情報を見てもらっている。
「新築マンションですからまだマンションは建っていませんが、現地に行って、何もない更地にマンションが建っているところが見られるというサービスを始められているんです。周辺の地域住民の方への説明にも使われているようですね」