目的は働き方を変えることではなく、
どうすれば少ない人数でより多くの仕事ができるか?

 最も影響を受けたのは、バックオフィス業務だった。付加価値型の人材にリソースを充当させるために、どんどんアウトソースを進めていったのだ。

 昔は、経理もITも総務もすべての国に独立した部門があって正社員が数十人ずついたが、今はこれを徹底的に標準化して、グローバルでワンチーム、ワンオペレーションになっている。

「標準化業務でとにかく雑巾を絞り切ってアウトソースしたり、機械に任せたりすることで、そのリソースをイノベーション型に持っていった。それがなかったら、マイクロソフトの成長はなかったと思います」

 そのきっかけになったのが、2000年問題が騒がれたときだったのだという。会社が危機感に満ちあふれ、こんなことをやっていたら長くは続かない、と圧倒的な業務の標準化が始まった。同時に利益を生み出すイノベーション型の働き方に変えていったのだ。

「実際には、マイクロソフトは働き方改革をやっきたわけではないんです。どうすれば少ない人数でたくさんの仕事ができるのか、という取り組みを続けていたら、見え方として働き方改革になっただけなんです。だから働き方を変えることが目的ではない。少ない人数でたくさんの仕事をするための手段なんです」

 少ないリソースで多くの仕事をし、それを持続可能な状態にする。これこそが、本来の働き方改革なのだ。世の中は激しく変化している。問われてくるのは、改革への哲学なのである。

(この原稿は書籍『マイクロソフト 再始動する最強企業』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)