ネットワーク効果が「需要サイドの規模の経済」をもたらす

 21世紀のインターネット時代になると、それに匹敵する独占が「需要サイドの規模の経済」から生まれている(ネットワーク効果の概念の普及に大きく貢献した2人の専門家、グーグルのチーフエコノミストのハル・ヴァリアンと、カリフォルニア大学のカール・シャピロ教授が用いた言葉)。

 供給サイドの規模の経済とは、対照的に、需要サイドの規模の経済は、生産における利益方程式の片方の、需要サイドで技術進歩をうまく活用するものだ。需要サイドの規模の経済を牽引するのは、ソーシャル・ネットワークの効率性、需要のアグリゲーション(集約)、アプリ開発、そしてネットワークが大きくなるほどユーザーにとっての価値が増す現象といったものだ。これらによって、プラットフォーム市場で最も大きな企業は、競争相手には手も足も出ないネットワーク効果という優位性を持てるようになる。

 需要サイドの規模の経済は、正のネットワーク効果の基本的な源泉であり、今日の世界における経済的価値の主な駆動力となっている。だからといって、供給サイドの規模の経済がもはや重要ではなくなったという意味ではない。もちろん今でも重要だが、ネットワーク効果によって、需要サイドの規模の経済が何より重要な差別化要因となってきたのだ。

 メトカーフの法則は、ネットワークを所有もしくは管理する者だけでなく、ネットワークの参加者にとっても、いかにネットワーク効果が価値を生み出すかを端的に説明している。イーサネットの共同発明者でスリーコムの創設者でもあるロバート・メトカーフは、ネットワークの加入者数が増えるにつれて、電話ネットワークの価値が非線形的に増加し、加入者間の接続を増やせることを指摘した。

 ネットワークにノード(結節点)が1つしかなければ、つながることはできない。私たちの知り合いのMITのある教授は、「史上最も偉大な営業マン」賞は最初に電話を売った人にあげたいという冗談をよく飛ばす。世の中に電話が1台きりだとすれば、誰にも電話をかけられないので、ほぼ間違いなく価値はゼロである。しかし、電話を買う人が増えるにつれて、その価値は増していく。

 2台の電話で接続数は1つ、4台の電話で接続数は6つ、12台で66、100台では4950となる。これは「非線形的な成長」、あるいは「凸成長」として知られる。まさに1990年代のマイクロソフト、今日のアップルやフェイスブック、明日のウーバーに見られる特徴的な成長パターンだ(これが逆に作用したのが、2000年代のブラックベリーの凸成長の崩壊である。ユーザーのブラックベリー離れが始まると、急速にネットワークのノード数が減り、そのせいでネットワーク自体の価値が激減し、他のデバイスに乗り換える人が続出したのである)。

 このパターンに続いて、主な経済面の結果がついてくる。ネットワーク効果を経た成長は、市場の拡大につながる。ネットワークを構成する友人の数が増えると、新しい買い手がその市場に引き付けられてネットワークに参加する。技術が成熟すれば、生産量が増すにつれて、往々にして価格も低下する。そうすると、魅力的な価格と連動してネットワーク効果が表れ、大勢の人がその市場を受け入れるようになるのだ。