グーグル、アマゾン、マイクロソフトに始まり、ウーバー、エアビーアンドビー、イーベイに至るまで、最も大きく、最も急成長を遂げ、最も強い破壊力を秘めた企業の成功の礎となってきたのは、プラットフォームと呼ばれるビジネスモデルである。プラットフォームは、ヘルスケア、教育、エネルギー、政府といった、より幅広い経済的、社会的領域の変革を担いつつある。本連載では、前世紀の戦略論を大きく書きかえ、世界10ヵ国でベストセラーとなった待望の邦訳『プラットフォーム・レボリューション――未知の巨大なライバルとの競争に勝つために』から、エッセンスを抜粋して紹介する。
20世紀は「供給サイドの規模の経済」が優劣を決定していた
ネットワーク効果は、技術面のイノベーションが牽引する新しい経済現象である。
20世紀の産業時代には、「供給サイドの規模の経済」に基づいて巨大な独占状態が生じていた。生産量が増えるにつれ、製品を作る単位当たりコストが低減するという生産効率がこのことを牽引していた。こうした供給サイドが牽引する規模の経済は、業界内の最も大きな企業に、競争相手には歯が立たないほどのコスト優位性を与えうるのだ。
産業時代に成長した巨大企業の例をいくつか考えてみよう。鉄鋼生産では、溶銑に空気を吹き込むイギリスのベッセマー法を用いることで不純物が除去され、生産コストが1トン当たり40ポンドから7ポンドに下がった。バロー・ヘマタイト・スチールは18基のベッセマー方式5トン高炉を稼働して、20世紀の変わり目に世界最大の製鉄所となった。
ドイツでも同様に、空気中の窒素から肥料を作るハーバー・ボッシュ法(今日、消費される食品の半分の生産に用いられている)が、BASFが巨大企業にのし上がるのに貢献した。同社は今なお世界最大の化学品会社として君臨している。
アメリカでは、トーマス・エジソンの照明と安価な発電技術の発明からゼネラル・エレクトリック(GE)が誕生したり、ヘンリー・フォードが採用した大量生産方式がフォード・モーターの躍進を加速させたりした。
事業が大きくなるほど、生産やマーケティング、物流のコストが安くなり、企業が着実に成長して利益を増やしていく正のスパイラルに入るのである(政府の介入、あるいは従来型の経済を陳腐化させるような破壊的な技術革新によってそのプロセスが回らなくなるまで、その状態は続く)。