
一体、クラブに行く人のうちのどれほどが「風営法」を正しく認識しているのだろう――。
そんなことを発端にナイトカルチャーについて考えるようになった。
風営法は誰のため?
長年、風営法改正に尽力してきた斎藤弁護士によると、「クラブ」や「ダンス」がキャバクラやパチンコなどの接待・賭博を取り締まる風俗営業から切り離されたのが2年前。そこから法律が変わり、深夜の営業が認められる代わりに営業許可を取得しなければいけなくなった。その結果、小さいハコや、街の中心部から外れたところにあるクラブが営業許可を取れなくなり、今までグレーで営業していたものが黒になってしまったらしい。
「草の根でやってるような、ずっと音楽文化に寄り添ってやってきたようなところが営業許可を取れないということになってしまって、それが非常に大きな問題になってしまっている」(斎藤弁護士)
この日も、このトークイベントの直前まで、観光庁の検討会に参加していたという斎藤弁護士。夜を観光資源として盛り上げようという議題にも関わらず、有識者を含めた参加者はおじさんばかりだとか。
今現行で盛り上がっているカルチャーとのズレが生まれている原因は、ここからなのかもしれない。
ナイトカルチャーと世間との隔たり

そもそも、ナイトカルチャーなんてかっこよく英語にしていても、実際のところ「夜遊び」が持つイメージは決してクリーンではない。今でこそ、オリンピックに向けて夜の観光業を盛り上げようなんて動きが出てきているが、そもそもは夜が好きな一部の人たちが「わかるやつがわかればいい」という認識で広まったのが夜遊びカルチャーだ。
フライヤー(クラブイベントなどを告知するポスター)などを見てみても、洒落たフォントにイラストなんかが描いてあっても、住所も最寄り駅もわからない。

日本在住10年で、数々のイベントを仕掛けているローレンさんも、多くの日本人は「ウルトラ」だったり「EDC」なんかのお祭り騒ぎ的な勢いが特徴のEDMイベントは大好きでも、クラブに行くことは少ないという。ヨーロッパのクラブシーンの中心でもある、テクノやハウスの魅力を知らない人が多いなら、じゃあその魅力をフライヤーに書いて若い人たちに説明してみよう!と提案するも、ダサいからと却下されてしまったそう。
スタイリッシュさ、仲間意識の強さを優先させ続けた結果が、若者への敷居の高さ、怖そうなイメージを生み出している一因かもしれない。かといって、何もかも丸見えで全方向に媚びるようになってしまっては、クラブごとの個性はいつか消え、面白くなくなってしまうだろう。