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『興亡の世界史06 イスラーム帝国のジハード』
小杉 泰 著(講談社/2006年)

 日本では「聖戦」と訳されることが多いジハード論が盛んな背景には、イスラム過激派がジハードを主張することで自分たちの武装闘争やテロ活動を正当化する状況がある。しかし、ジハードは、社会とその国家の変遷に伴い、イスラム思想史の中で変化し、純粋に宗教的な奮闘努力をすることが本来の意味であり、心の悪と戦う内面ジハード、公正のために努力する社会的な行動を指していた。宗教と国家が結び付くイスラムでは、自衛のための「剣のジハード」も存在する。

 今日、イスラム帝国亡き後は、統制するカリフ(最高指導者)がおらず、野戦司令官がジハードを命じる。民族主義や社会主義が敗北した後、ジハードを盾に闘争を行うのは本来の考え方から懸け離れていると論じる。

(元アラビア石油取締役、オイルアナリスト 庄司太郎)