リーダーは会社と地域に精通すべし
ある日、ある駅長に
「近くでおいしい店はどこ?」
「おすすめの名所は?」
「まちのキーパーソンは?」
と尋ねた。
しかし彼は
「あのー」
「えーと」
というばかりで、何ひとつ満足に返答できなかった。
当社の信条のひとつは「地域を元気に」だ。
しかし、彼は元気にするどころか、ちっともまちのことを知らなかった。
彼はまちのインフラの主要部である駅のリーダーのくせに、まち全体はおろか、駅のまわりすら、ろくすっぽ歩いていなかったのである。
違う駅でも駅長に「市長ってどんなひと?」と尋ねたら、悪い冗談じゃないかと思うほどに、まったく市長のひととなりについて彼は知らなかった。
私はこの2人の駅長を珍しくきつめに叱った。
それでは「地域を元気に」などできないではないか!
地域とコミュニケーションをちゃんととらない駅長なんて最低じゃないか!
当たり前のことができていない。こういうことについて私は怒るのだ。
地域を元気にするためには、まずは地域のことを知り、地域のひとを知ることが必要だ。ごく当たり前のことである。
最初はあまり歓迎されないところにも、臆せず何度も足を運ぶ。
何度か通ううちに必ず心が通じる。コミュニケーションが成立するようになる。
駅長とは「地域を元気に」する組織のリーダーなのだから、率先してそういうコミュニケーションを図らなくてはいけない。
だから、駅長という管理職の手当は靴代なのである。
リーダーとして歩き回り、会社と本人の名前や顔を広く知ってもらい、まちにふれてもらうためのお金である。
また、駅長は何より、駅というまちの重要拠点の見張り番だ。
駅ひとつだって、つぶさにチェックをするならば、かなり広いものだ。
駅構内から線路、看板やポスターをチェックして、まちに出てお客さまに役立つ情報を集め、取引先や関係者やキーパーソンを訪ねて回れば、一日数キロはざらに歩くことになる。
それだけ歩けば普通の革靴なら、1~2ヵ月でボロボロになる。