心に贅肉がついたら、すぐ体に表れる

 実際のことをいうと、当社で靴代のかかっていない駅長はきわめて少数派である。

 駅長たちは皆、駅のまわりを、まちの中を精力的に動き回ることを社是として日々働いている。

 ニコニコと笑顔が板についていて、イカツイけれど日焼けしていて、かなり履きこまれているけれど、ちゃんと磨いた靴が足元に認められたならば、それはまさにJR九州の駅長である。
(あまり身内をほめすぎるのはなんだが)

 商店街から行政関係者にいたるまで、各地域の方々からこぞって話題にされるような当社の駅長もじつは少なくない。

 聞けば、そういう駅長たちは、頼まれもしないのに地域の催しや集まり、時には草むしりやドブさらい、ラジオ体操の類までいろんなところに顔を出し、そしていろんな話をして、聞いて帰ってくるのだという。

 私が外食事業において教えを乞うたある経営者は、毎日各店舗をくまなく歩き、のべつ関係先に顔を出したという。

 よく考え、よく動き回るリーダーの靴は、放っておくとすぐボロボロになるし、外食の仕事をやりながら、どれほど試飲や試食を繰り返しても、「腹に贅肉(ぜいにく)なんかつきようがないよ!」と話していた。

 そして、もし心に贅肉がつきはじめたら、体にもすぐに表れ、やがて会社の業績に余分な債務やリスクが表れるとも。

 トップはよく歩き、話をし、勉強をしなくてはならない。
 そうしないと会社はたちどころにおかしくなる。

 手当という言葉を耳にするたびに、大分駅のなつかしい記憶と、その経営者の言葉が思い出されるのだ。

☆ps.
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