今、顧客減、会員減に悩んでいる企業は多い。中でも定額課金=サブスクリプションモデルで利益を上げている場合には、会員取得ばかりに目を向けて、離れてしまう顧客には、なかなか有効な手を打てない現状だ。
元WOWOWグループ初の女性取締役であり、顧客を引き留める「リテンションマーケティング」で実績を上げた大坂祐希枝氏が初の著書である『売上の8割を占める 優良顧客を逃さない方法 利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』を発売。
この連載では、この著書から一部抜粋してご紹介する。

利用し始めてからの期間によって
解約引き留め策を変える

前回は、通り一遍のアンケートではなく、デプスインタビューを行なって、顧客の本当の解約理由を見つけ出した方法をお伝えしました。

その後、私たちは、その結果を基に、解約時期ごとの解約者のペルソナ(全体を代表する架空の人物像)を作成し、コミュニケーションポイントを決めて解約を抑止するための施策を始めたのです。

解約の状況を分析すると、加入翌月、3ヵ月目、6ヵ月目に解約が増加する傾向が浮かび上がっていました。

そこで、まず「加入翌月の解約」を減らすための方法として、加入申し込みを受ける時のカスタマーセンターでの会話を工夫することにしました。

カスタマーセンターではそれまでも、顧客が加入する際、加入の動機になった番組について質問していましたが、併せてそれ以外に興味があるジャンルを聞いて、直近の放送予定の中から顧客が興味を持てそうな番組を案内し、顧客が加入してWOWOWを見始める前にいろいろな番組を案内するようにしたのです。

加入前に知っている番組以外にも楽しめそうな番組があることを伝え、自分に向いた番組がいろいろあるな、と早めに気づいてもらうためです。

無料キャンペーン期間の終了や加入目的番組の終了などによる解約を防ぐために、ほぼすべての加入申し込みにこの施策を行うようにしました。

契約直後の接触方法としては、WEBによるメールなどを優先し郵送物をひかえました。WOWOWでは、加入後すぐに顧客宅に番組表やWOWOWの基本情報を紹介するスタートキットを送付しており、郵送物が過剰になると顧客の反応が薄れ、費用も膨らむからです。

加入翌月の主な解約理由である、「加入目的の番組が終了」の多くは、スポーツの単発試合やアーティストのライブ中継など、継続的に編成されない単発番組を加入動機にあげた方々でした。

この方々には目的の番組が放送される前のコミュニケーションが必須です。スポーツやライブの中継を見るのを目的に加入する方は、目的の番組以外は眼中に無い場合がほとんどなので、加入直後から「あなたが好きな番組、感動できる番組が目的番組以外にもある」「契約期間内に他の番組も楽しんでみよう」と、加入時にコールセンターのオペレーターが案内し、その後は番組宣伝写真を多用したメールやDMで伝えました。