ライバルも尊ぶ崇高な態度

 私が大いに影響を受けた外食産業のプロや、若かりし時代に出向し、多くの学びを得た丸井の方々などは、「坦として蕩蕩たる」お手本のようなひとたちだった。

 外食のプロは敵情視察に行くと、よい店でもそれほどサービスも味もよくない店でも、会計のときには笑顔で「ごちそうさま! おいしかったよ」という。

 すると、応対中の店員やまわりのスタッフが喜び、店内の雰囲気も少し明るくなる。

 これは見ていて、相当に崇高な光景だった。

“敵”ではあるが、同じ産業で働く同朋だという態度で、笑顔と感謝の言葉をもって喜びと希望を与えていた。

 丸井の社員の方々は、他社の百貨店を視察する折、必ず1階の入口前でコートを脱ぎ、お辞儀をしてから店内へ入った。
 そして帰るときも1階でお辞儀をして、さっそうと笑顔で店から出ていく。

 相手はライバルだが、同じ産業で働くひとたちに敬意を表していたのである。
 自分たちが生きる社会において、どういう存在であるべきか。

 多くの会社が唱える理念だが、それはたったひとりの小さな振る舞いからはじまっているのだ。

 JR九州のような会社で働く社員は、まさに社会のよき存在でなくてはならない。
「地域を元気に」するものとして、私たちはつねに快い存在でなくてはならない。

 きっぷをたくさん売るのが仕事ではない。それはただの作業だ。
 JR九州のファンを増やすことこそが仕事なのだ。
 私はいつも社員にそんなことを説いている。

☆ps.
 今回、過去最高競争率が316倍となった「ななつ星」のDX(デラックス)スイート(7号車の最高客車)ほか、「ななつ星」の客車風景を公開しました。ななつ星の外観やプレミアムな内装の雰囲気など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事を、10万PVに迫る勢いの大反響動画「祝!九州」に興味のある方は、第7回連載もあわせてご覧いただければと思います。