司書の松田ユリ子さんは、2011年4月から同校の図書館に勤務する。自身のキャリアが最後となることを見据え、何をすべきか様子を観察しつつ考えていたという。そんなある日、生徒の相談員を務めていた石井正宏さん(現NPO法人パノラマ代表)から声をかけられた。

「図書館で若者支援ができないか」という相談だった。相談室で生徒を待っているだけでは、ほんの一握りの生徒しかやってこない。でも図書館ならいろんな生徒が出入りする。図書館なら、子どもたちの悩みをもっと聞くことができるかもしれない。

「相談したいことがあってもなくても、本を読むふりをすれば図書館の住人になれる」と石井さん。学校内で、生徒たちともっと顔を合わせて何気ない会話ができる場として図書館があった。図書館で相談ごとがある生徒を見つけ、「どろっぴん(Drop In)」と呼ばれている個別相談へ誘い、悩みを拾い上げるというのが石井さんの計画だ。

校内だけど、音楽も昼寝もOK
ボランティアは260人以上

 このアイデアに、司書の松田さんは「とりあえずやってみよう」と即OKを出した。最初は反対されることを覚悟していた石井さんにとっては、驚きの展開だったという。従来の学校では、新しい試みは敬遠されやすい。幸い同校では、当時の校長を始め管理職の人たちが、できるだけ学校を開き外部の力を取り入れて、新しい取り組みができる土壌を作っていた。

 カフェを始めるに当たって、まずは図書館で飲食を可能にすることから始めた。音楽をかけてもいい。レジャーシートをひいて、寝転んで本を読んでも、そこで昼寝も可。仲間とわいわい騒ぎたい子どもたちがソファーの辺りを陣取るなら、おひとり様は窓際で静かに座れるようにする。そんな環境作りを始めた。

 ぴっかりカフェには、学校とは関係ない大人がボランティアに入っている。その数は年間260人以上。毎週のように来る大人もいれば、特別行事のみの手伝いの人もいるが、それでいい。

「多様な大人が来ることで、子どもたちの生きるストライクゾーンを広げる」と石井さん。立派なロールモデルになるような人だけが来るわけではない。社会にいる様々な大人と実際に接する中で、生徒の意識を「こうでなくてはならない」から「これもありなんだ」へ変えていく。それは、彼らが社会に出た時に、生きづらさを感じる要素をなるべく減らすことであり、また、臨機応変な対応力を身につけるためでもある。