そして、「そんなことで悩んでたんですか? 小室さんも“普通の人”だったんですね、安心しました。そんな小さいことで悩まないでください。ヤバいと思ったら、SNSで私たちにヘルプを出してくれたら、すぐに教えますから」と助け船を出してくれたのです。そのとき、胸のつかえがスッと取れたような気がしました。

 そして、それ以来、番組が始まると、メンバーたちがテレビの前でスタンバイして見守ってくれるようになりました。実際に、SNSで助けてくれたこともあります。しかも、番組が終わると「今日も頑張りましたね~」と褒めてくれるようになりました。なんとか無事に1年間のテレビ出演をやり遂げることができたのは、メンバーのサポートのおかげだったのです。

「弱み」こそがマネジャーの武器である

 これは、私にとって大きな出来事でした。
 もちろん、メンバーが助けてくれたことも嬉しかったのですが、それ以上に、「メンバーに対して強がる必要なんてないんだ」と思えたことが大きかったのです。

 私は、「弱み」があることを隠そうとばかりしていましたが、この経験を通じて、「自分が弱みだらけの人間であること」を受け入れられるようになりました。そして、自分の「弱み」「悩み」を開示して、素直に助けを求めることではじめて、「私」という存在はメンバーに受け入れられ、心も楽になることを学んだのです。

 しかも、この一件以来、徐々にメンバーも自己開示をしてくれるようになり、職場の雰囲気が柔らかくなっていきました。こうして、チームに自然と「心理的安全性」が芽生えていったのです。その後、会社の業績を非常に大きく伸ばすことができたのは、この出来事と無関係ではなかったと思っています。

 ですから、皆さんにも、ぜひ「メンバーより優秀でなければならない」という思い込みから自由になっていただきたいと願っています。優秀である必要なんてありません。むしろ、「弱み」があることは、マネジャーの「武器」にすらなります。なぜなら、「弱み」を思い切ってメンバーに開示すれば、そこに「心理的安全性」が生まれるからです。

 もちろん、それには、誰よりも「チームの目標達成」や「メンバー全員がいきいきと働けること」などに強い思いをもっていることが大前提です。そのうえで「弱みを明かせること」「助けを求めることができること」こそが、優秀なマネジャーになる重要なポイントなのです。

 もっと言えば、もう「仕事用の仮面」をかぶるのはやめたほうがいいのかもしれません。 先ほどご紹介したサカグチさんの言葉に、次のようなものがあります。

「今まで自分の人生を仕事と私生活とに分けて考えてきたが、自分の時間のほとんどを仕事に費やすわけで、仕事は自分の人生そのものであり、それは私以外のメンバーも同じこと。もし仕事で自分の気持ちを打ち明けたり、正直になれなければ、自分が本当に生きているとは言えないんじゃないか」

 そのとおりだと思います。
 誰もが本当は「仕事用の仮面」をとって、自分の正直な気持ちを伝えたいと思っているのではないでしょうか? それに抵抗感があるのは、弱みを見せてバカにされるのが怖いからかもしれません。でも、その一歩をマネジャーが踏み出せば、誰もが仮面をとり始めるはずです。そして、チームが根っこから変わり始めるのです。