どこの会社も
「使い物にならないデータ」から始める
今、この連載を読んでくださっている方の中には「うちの会社も同じような状態だ」と思っていらっしゃる方が少なくないのではないでしょうか。
WOWOW退職後に、さまざまな会社のコンサルティングをさせていただくようになって、多くの企業のデータを拝見しました。
しかし、私がWOWOWで「使い物にならない」と思ったのと同じようなデータしかないのが、多くの企業の実態でした。
歴史のある企業であればあるほど、従来からのスタンダードなやり方と成功体験があり、これまでは顧客データの活用の優先度は高くなかったのだと思われます。
データが重視される時代になって、「うちは、どうするんだ?!」と慌てている企業は珍しくありません。御社だけではありません。多くの会社、そして担当者が、使い物にならないデータから始めているのです。
当時のWOWOWもそうでした。私はマーケティングに活用できる全顧客のデータがほしいと思いましたが、解約防止部ができた時点ですでに総加入件数は240万件を超えており、すべての加入者データをとりなおすことなどできるわけがなかったからです。
まず正確に把握できる部分から
では「使えるデータ」を持っていない企業がマーケティングに活用する顧客データを収集するにはどこから始めるのがいいのでしょうか。
顧客接点、顧客の状況を把握できるチャネルは、世の中のデジタル化に伴って近年飛躍的に拡大しています。とは言っても、はじめからすべてのチャネルでデータをとる必要はありません。全部を一度に把握しようとすると顧客を理解せずに数字を追うことにもなりがちです。
まずは自社の商品やサービスのプロモーション、販売、サービスの利用、継続や離脱など、正確に把握できる顧客の動きを数値化することから始めます。データ化する対象数が多く社内で対応できない場合は、地域、生年代、商品などを絞って、まず社内処理が可能な規模でトライアルすることをお勧めします。
その後は取得ポイントを周辺に広げたり、データ取得にあたるスタッフの人数を徐々に増やしたりして、正確に把握できている部分のデータ量を拡大していきます。
なぜなら、データ獲得過程に曖昧さや不正確さが含まれていると、獲得量の拡大に伴い分析結果と実態のブレがより大きくなり、活用できる知見につながらないからです。そして部分的にスタートさせた業務をできるだけ早期に代表性がある規模と質にします。
そこから得られた知見を全体に広げるのが、使い物にならないデータから始めた企業がデータ活用範囲を拡大する方法です。
(続く)