データを可視化すると
会社全体で共有できる

 WOWOWの番組数は、編成のほぼ半分を占める映画だけでも、月に400を超えており、映画以外にも、スポーツ、ドラマ、音楽、ステージ、ドキュメンタリーなどの多数の番組があります。

 どのジャンル、番組が、どんな顧客の支持を得ているのかを知る必要がありましたが、個々を詳細に追ってしまうと、かえって全体像が見えなくなりそうでした。

 データ分析を担当している部署だけでなく、マーケティングに関係のない業務の社員も含め、全社員が番組編成と加入や解約の効率を共有できる分かりやすい分析が必要とされていました

 マーケティング局では、番組編成と加入獲得の関係を全社員が月ごとに情報を共有、把握するために「面積表」を作ることにしました。

「面積表」とは、ある月に放送されるコンテンツ(番組)から、その月の加入数を予測し可視化するものです。過去に同じ番組、出演者で放送した番組でも、放送時期や、生放送か録画かなど放送形式によっても予測が変化します。

 たとえばある月の場合、「テニスの○○オープン:××千件」「アーティスト○○のライブ中継:××千件」「映画○○シリーズ一挙放送:××千件」「海外ドラマ○○のシーズン2:××百件」といったようにこれまでの加入実績から、この月の加入獲得数の予測を立てるものです。

 過去に放送実績のないコンテンツの予測数値は、内容や出演者が類似した番組の実績を参考にして割り出します。同じジャンルの番組でも、加入獲得数はそれぞれ違うので、ジャンル別に予測数の大きいものから中規模、小規模の順にコンテンツ名と加入予測数を並べて表にします。

 表では感覚的にとらえにくいので、面積に変換して可視化したのが「面積表」です。 決まった件数(たとえば10件)を1マスとして、それぞれのコンテンツによる獲得予測数を四角形の大きさで表すと、ジャンルやコンテンツごとに面積の大小の差がつくので、コンテンツごとにどれぐらい獲得できる可能性があるかが、一目見ただけで直観的に把握できる図になります。

 言い方を変えると、面積表で広い面積を占めているコンテンツは、それだけの数をきっちり獲得しなければならないということ。

 全社が営業の獲得優先順位も把握できるわけです。こういう面積表を向こう3ヵ月分ぐらい作って社内で共有し、事業計画分の面積を予測の四角形で埋められない月は、加入予測が足りないのでキャンペーンを企画するなどしていました。

 WOWOWには、この獲得予測数を高い精度で行うスタッフがおり、毎月作られるこの面積表をもとに社内で顧客の獲得の議論がなされました。

 こうした予測の可視化は、営業やマーケティング以外の部署にも、計画と現状の差やそのために打つべき施策を共有するのに有効で、複数のブランドや商品を持つ企業で活用可能だと思います。

 この面積表はあくまでも、加入予測を可視化したものなので、放送後にその加入者がどれだけ解約せず残るかはまた別の話です。

 たとえばアーティストのライブやシーズンもののスポーツ中継が放送される月なら、そのアーティストやスポーツ選手のファンが多数加入してくれることが予測されますが、放送が終わったら一気に解約が増える可能性もあります。

 従って、解約が発生しやすい番組が面積表の中で大きい月はカスタマーセンターのトークやサンクスコールで早めの解約抑止策が必要、など面積表は解約抑止策のあり方も示していました。

(続く)