高齢者の「骨折」と「転倒」が減った

 2014年のコクラン・レビュー(国際団体「コクラン共同計画」が、適切に実施された研究を収集し分析した結果をまとめた、定評あるレビュー)は、最近行われた53件の研究を分析した結果、骨折(高齢者に多い股関節骨折を含む)の予防にはカルシウムを含むビタミンDサプリメントがとくに有効だと報告している。

 ただし注意すべき点として、カルシウムを1日700ミリグラムを超えて摂取しても、それ以上の骨密度上昇や骨折リスク減少の効果は期待できず、かえって心血管イベントの発症リスクが増大しかねないことを、最近のデータは示している。

 だがビタミンDに関しては、そんな心配は無用だ。

 高齢者4万人以上を対象とした2009年の分析で、ビタミンDを毎日摂取することによって「股関節骨折と非脊椎骨折が20%減少した」ことが確認され、その付随研究では転倒が19%減少したことが示された。

 股関節骨折はアメリカをはじめ、世界中で大きな健康問題になっている。アメリカでは2003年の1年間で30万人以上が股関節骨折で入院した。股関節骨折は、高齢者の深刻な合併症や死亡のリスクを大幅に増大させる。

 医学的な関心を呼んでいる障害のひとつに、アメリカ人男性にとても多い、勃起不全(ED)がある。原因を特定するために膨大な研究が行われており、原因や有効な治療法がいくつか明らかになっているが、性医学の専門誌『ジャーナル・オブ・セクシャル・メディシン』に掲載された2014年の研究は、重度の勃起不全の男性は軽度の男性に比べて、ビタミンD欠乏の度合いが有意に高かったと報告している。

 女性では、低いビタミンD濃度が子宮筋腫(良性だが痛みを伴うことの多い子宮の腫瘍)の発症リスクを高めることを示唆する研究がある。

 2013年に国際環境疫学会誌『エピデミオロジー』に掲載されたアメリカ国立衛生研究所の研究は、女性1000人以上(うち3分の2が子宮筋腫患者)の健康状態を調べ、血中ビタミンD濃度や血液検査の結果と比較した。

 その結果、ビタミンD濃度が十分な女性は子宮筋腫のリスクが32%低く、またビタミンD濃度が10%上昇するごとに、リスクが20%低下したと結論づけている。

 研究の筆頭著者で疫学者のドナ・ベアードは、「十分なビタミンD濃度を保つことは、いろいろな健康状態を改善する効果があり、おそらく子宮筋腫もそのひとつなのだろう」と総括している。