風邪やインフルエンザに「予防接種」以上の効果があった

 日光との関連性が示唆される疾患のうち、最も一般的なものは風邪や流感などの呼吸器感染症だろう。昔から風邪は寒いときに引くものと決まっているから、暖かくして出かけなかったから具合が悪くなったのだと、誰もがあたりまえのように考える。

 これを裏づけるエビデンスはいくらでもあるだろうが、最近ではビタミンD欠乏による免疫低下も一因と考えられている。

「風邪やインフルエンザの予防にはビタミンCがいちばん」というのが数十年前からの通説だが、「太陽のビタミン」のほうが予防効果が高いことを強く示唆する研究成果が相次いでいるのだ。

 日光からビタミンDを十分得ないと風邪になる、という説が最初に唱えられたのは1981年だが、本格的な研究が始まったのはごく最近のことである。

 日照が少ない時期にビタミンDサプリメントを摂取してもほとんど効果がないとする研究も一部にはあるが、他方では興味をそそる結果も得られている。

 栄養学の専門誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』に掲載された、2010年の日本の研究は、354人の子どもを対象に十分に制御された二重盲検ランダム化比較試験を行い、ビタミンDは一般的な抗ウイルス薬よりも風邪とインフルエンザの予防効果が高かったと結論づけている。

 ビタミンDを摂取していた子どもの罹患率は、当初は対照群の子どもと変わらなかった。だが血中のビタミンD濃度が上がりきった1か月後になると、保護効果がはっきり現れた。

 一般的な予防接種を受けた子どもはリスクが10%低下したのに対し、1日あたり1200IU(国際単位)のビタミンDを摂取して感染にさらされた子どもは、風邪とインフルエンザの罹患率が50%以上低下した。

 全体としてみれば、ビタミンDを摂取した子どもは対照群に比べて、最も一般的な型のインフルエンザの罹患率が40%以上も低下したのだ。

 デンバーのコロラド大学救急医療科によって行われ、2009年に内科医学の専門誌『アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン』に掲載された最大規模の研究は、成人と若者1万9000人から6年にわたり収集したデータを分析した。

 その結果、ビタミンD濃度が低い群は、正常または高い群に比べて、呼吸器感染症になる確率が36%も高かった。

「本研究は、風邪やインフルエンザなどの一般的な呼吸器感染症を予防するうえで、ビタミンDが重要な役割を果たすことを裏づけている」と、研究責任者のアディト・ギンデは述べている。(中略)