資金管理団体「陸山会」の土地購入における虚偽記載により、政治資金規正法違反の容疑で強制起訴された小沢一郎・元民主党代表に対して、4月26日、東京地裁は無罪の判決を言い渡した。民主党の主導権争いで劣勢に立たされていた小沢氏が、再び復権を狙って動き出す可能性は高い。党内の一大勢力を率いて「増税反対」を唱える小沢氏の復活は、消費税国会で苦戦を強いられる野田内閣にどんなインパクトを与えるだろうか。55年体制終焉後の20年間、常に政治のキーマンであり続けた小沢氏が、再び政界再編の口火を切る可能性はあるのか。政治コラムニストの後藤謙次氏が詳しく語る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 編集長・原 英次郎、小尾拓也)
免罪符なき「グレーの無罪」で勝利
小沢氏にとってはむしろつらい判決
――資金管理団体「陸山会」の土地購入における虚偽記載により、政治資金規正法違反の容疑で強制起訴された小沢一郎・元民主党代表に対して、4月26日、東京地裁は無罪の判決を言い渡した。これにより、小沢氏は近く党員資格停止処分を解除される見通しだ。小沢氏の復権は実現するだろうか。
無罪には、「純白の無罪」と「グレーの無罪」の2種類がある。今回、小沢氏が受けた判決は「グレーの無罪」だ。すでに石川知裕衆議院議員ら元秘書3人が有罪判決を受けており、小沢氏についても虚偽記載に関与した事実認定がほぼなされていたにもかかわらず、最後の「共謀の成立」について立証が困難とされたため、無罪となったに過ぎない。
これは、小沢氏にとってむしろつらい判決ではないだろうか。自分は罪を免れても、事務所全体の有罪は認定されているわけだから、世間では今後も小沢氏の関与に対して疑念が残り続ける。そもそも小沢氏が、4億円もの資金のやりとりを秘書に任せ切りだったこと自体に問題がある。
また、もし本当に潔白の身であったとしても、無罪判決が出てしまった以上、控訴して公の場で自己の正当性を主張することができなくなってしまった。そう考えると、「小沢氏の説明責任はむしろ増している」と言えまいか。こうした状況で復権を急ごうとすれば、世論の指弾を受けかねない。
ちょうど20年前の1992年にも、金丸信・元自民党副総裁が、東京佐川急便から5億円の闇献金を受けた疑惑により、東京地検特捜部から出頭命令を受けた。しかしこの事件は、結局わずか20万円の罰金で決着したため、世論の激しい反発を受けた。今回の小沢のケースとはだいぶ事情が違うが、国民感情を侮ると痛い目に遭う。まさに「免罪符にならない無罪判決」というのが、今回の判決の性格と言える。