5年以内くらいだと思っています。逆に言うと、それぐらいでやらないといけないという危機感があります。

――カメラ市場などでは、どんどんレベルの高いものを作っていくことを突き詰めていった日本のものづくりが、いわゆる破壊的イノベーション(既存品より低性能でも使い勝手など新しい価値基準によって顧客支持を得る革新)によるカメラ機能付きスマートフォンの登場などでひっくり返されました。医療機器の開発においてこれは起きないと考えるのですか。

 起きないと思います。なぜなら、この業界はエビデンスに基づいていろいろなものが提供される。そのエビデンスを構築するのに片や100年の歴史がある。1年や2年で追い越すだけのスピードでエビデンスがたまるのか、ということですよね。

――ハードを追求する一方で、ビッグデータを活用するべくソフトの進化も急速に進んでいます。

 ベンダー・ニュートラル・アーカイブ(VNA。一定の規格に準拠していれば、ベンダー〈メーカー、販売会社〉を問わずデータを取り込める医療情報統合管理システム)の技術を使った取り組みなんかはやっていますよ。実はそれを日本でやり始める前にね、米国でずっとやっている。

――この分野では米バイタル・イメージズを買収しました。

 2011年に買収して、これによって米国のプレゼンスが高くなっていくにつけ、VNAの必要性は当時から分かっていました。病院は院内のITシステムに何年か一度大きな投資をするという非効率なやり方がオバマケア(オバマ大統領時代の医療保険制度改革)下ではできなくて、トータルなシステムを水平にいくつかに分けるようになり、どうせなら統一できるものにしていこうっていうのがVNAのもともとの発想。そこから画像のアーカイブだけじゃなくて、電子カルテなどに網を広げるとより良いものになっていくだろうというのが今の流れです。VNAに取り組むとか、みんな口にしますよね。だから、そこはもうレッドオーシャンなんですよ、きっと。

――ただ医療現場に行って「VNAやっていますか。大量にあるデータを活用していますか」って尋ねると、大病院でも「まだこれから」と返ってくる。だからブルーに見えます。

 それは、時間がかかる、ということなんです。個人のヘルス・レコード(生涯にわたる個々人の医療・健康情報)を大事にしたいと言いながら、個人がそれに対し本当にお金を払いますかっていう問題がある。

――マネタイズが見えてこない。

 われわれが社内カンパニーで2014年からやったときも、まさにその問題に直面しました。BtoBでやってみたりもしましたが、社内カンパニーは解散し、これをどうやって再展開しようかというのは考えています。

 全く個人的な意見として話しますね。今までの医療は病気になった人を健康に戻すのが使命で、そのための仕組み。病気にならないように社会がどう取り組むかについては、これを司る機関がない。そこのビジネスが本当に社会の中で使命感を持って実現されるには、コミュニティのヘルスケア度を最高にするために努力をすることに対する社会の仕組みが必要です。

 そうした社会で健康を害した人を治すことを収益基盤にしている病院が成り立っていくのか。それを補うために病気にならないようにするヘルスケアでお金が入る仕組みにするのが正しいのか。どれも議論が足りない。国民的コンセンサスが必要だと思います。

――話を3つの成長軸に戻すと、3つ目は何ですか。