この仲介業者は、研修生を日本に送れば終わりではない。研修生が日本に送られた後も、金銭を巻き上げるだけでなく、なんと「監視役としての実習生」を日本に派遣している。そして、それに結託している日本の中小企業がある。その結果、日本にも母国にも居場所のなくなった実習生が、次々と失踪している。2015年度には4980人のもの失踪者を生み出しているのである。

 外国人技能実習制度は国際社会から多くの批判を受けている。国連のホルヘ・ブスタマンテ氏による報告書では本制度を「奴隷制度または人身売買」と判定した。その上で、日本政府に対しこの制度の廃止と雇用制度への変更、関連企業から完全に独立した監視・申し立て・救済機能の確立の勧告をしている。しかし、これまで安倍政権は、抜本的な解決などは考えてこなかった。

アジアの労働市場で
日本の優位性は低下している

 繰り返すが、安倍政権が外国人単純労働者の受け入れ解禁を決断したのは、国内の人手不足を解消するためである。だが、それは新たな制度をつくれば解決する簡単な問題ではない。実は、アジアの労働市場において、日本の優位性が低下しているからだ。

 近年、中国人「観光客」の爆買いが話題となっている一方で、中国人「労働者」が実は減少している。外国人技能実習生の受け入れがピーク時だった2008年には、およそ80%が中国人であった 。

 だが、中国経済の急激な発展によって、上海など都市部では建設ラッシュだ。賃金面で日本の優位性はなくなっている。例えば、外国人労働者のうち中国人が7割を超えていた愛媛県の中小企業団体中央会は、愛媛の最低賃金でフルタイム働いた場合の月収は、中国の都市部で働く場合と大差がないと指摘している。また、日本で高い人権リスクを背負いながら低賃金で働くより、中国の都市部で働いたほうが安全ということになっている(『日本経済新聞社』2016年7月18日)。

 現在では、中国の山間部まで募集をかけないと実習生候補が集まらない。2015年時には中国人技能実習生の割合が42%に留まるなど、中国人実習生の数は半分程度に落ち込んでいるのだ。

 また、韓国や台湾の単純労働者受け入れ政策への転換がある。日本の外国人技能実習制度は最長滞在期間が3年であるのに対し、韓国は技術が習得できれば熟練労働者に移行でき、台湾は最大12年まで滞在を延長できる 。