私の感想は、彼は“人形”である。私は特に強い政治的信条はないので、見たままの感想である。

 軽くて、いろんなデータをインプットされると、その通りに動いたりしゃべったりする。

 普通の日本のおじさんレベル以上に、特に自分のこの国をこうしたいとか、豊かにして国民を幸せにしたいと思っているようには私には見えなかった。

 そしてインプット通りに、中国と一緒に一帯一路開発で日本製品を売るように働くのだろう。

 夜に天安門広場エリアに行ってみた。顔認証とパスポートチェックを受けて中に入った。夜空にはためく日本国旗と中国国旗。

中国メディアは安倍首相訪中を、実際にはどの程度の扱いで報じていたか新刊は中国のタイムリーな話題を、コンパクトかつディープにまとめた『本当は怖い 中国発イノベーションの正体』谷崎光 600円

 今回、安倍氏の訪中は、中国人の間ではさほど、話題にはならなかった。

 北京大を歩く学生たちにも話を聞いたが、日本の首相が自分の大学に来ていることを知らない学生も複数いた。トランプだと悪役だが、そんなことはないだろう。

 日本のこれからの課題は、もう中国に勝った、負けたではない。今後、いかにこの国に飲み込まれないか、である。

 これからの日本は中国の傘の下で歩んでいけばよい、という人が時々いるが、私は反対である。

 どこの国も大きくなればなるほど、強権化し貧富の差は広がる。小競り合いを起こしながらも、小さな国がたくさんあるのが幸せではないかと思っている。

◎谷崎 光
作家、(株)ダイエーと中国の合弁商社勤務後、作家に。近刊は『本当は怖い 中国発イノベーションの正体』。松竹で映画化された『中国てなもんや商社』(文藝春秋)、『日本人の値段』(小学館)など著書多数。2001年から北京大学留学を経て北京在住。ツイッターのアカウントは@tanizakihikari