「返報性の法則」を意識した言動に徹する

 このような取り組みをチーム内で徹底したうえで、上層部の会議に提案をする前には、マネジャーは「念を押す」ひと手間をかけるとよいでしょう。メンバーが他部署を巻き込みながらつくりあげた提案内容について、経営会議などで意思決定にかかわる取締役などに事前に了解を得るのです。

 とはいえ、課長クラスのマネジャーが、他部署の取締役に直接アプローチするのは難しいものです。そこで重要になるのが、その取締役の意思決定に影響力をもつ課長クラスのキーパーソンとの関係性です。そのような人物と気軽にコミュニケーションが取れる関係性を構築しておけば、彼を通じて取締役に「好意的なインプット」をしてもらうことができるからです。これができるかどうかで、上層部の会議での意思決定のあり方に雲泥の差がつくのです。

 そのためには、誰がキーパーソンなのかを観察したうえで、そうした人物との関係性を構築するために日頃からアプローチを続けることが重要です。その際に意識すべきなのが「返報性の法則」です。

「返報性の法則」とは、「相手に対して何らかの価値あるものを提供することで、相手が自分に対して報いなければならないと強く感じること」です。つまり、「君の頼みは断れない」と思ってもらうということ。この意識を相手がもってくれていれば、“スジの悪い提案”でさえなければ、必ず、彼の上司である取締役に好意的なレクチャーをしてくれるはずです。これが、非常に効果的なのです。

 では、どうすれば「返報性の法則」を効かすことができるか?
 個人的な“貸し借り”もあるかもしれませんが、重要なのは業務上の“貸し借り”です。相手の部署で困ったことがあったときに、力になってあげる。相手の部署が実現したいことに、力を貸してあげる。その積み重ねで、「返報性の法則」を生み出すのが最も効果的です。

 もちろん、そのために、自分のチームに過重な負担をかけるようなことは避けなければなりませんから、何でも相手の要望を叶えることはできませんが、できる限りの努力をする。そして、社内のキーパーソンとの「ギブ&テイク」の関係性のネットワークをできるだけ広く張り巡らせることが、マネジャーの重要な仕事なのです。