逆風の真っ只中にいた2000年末から約14年半にわたって川崎の代表取締役社長を務め、富士通という企業色が強かったチームを川崎市へ浸透させるための陣頭指揮を執ってきた武田信平氏が、地道な努力を積み重ねてきた日々をこんな言葉で振り返ったことがある。

「何をしてきたかと言うと、我々は車の両輪だと言ってきたんです。両輪とはチームを強くすることと、地域に密着することの2つ。これらを必ずやり切っていこう、と」

 例えば地域密着を図る事業のひとつとして2010年から展開されてきたのが、川崎浴場組合連合会とコラボレーションした市内の銭湯利用促進キャンペーン『いっしょにおフロんた~れ』だった。中村をはじめとする現役選手たちも、シーズンオフになると積極的にイベントに参加することで人気を浸透させてきた。

 その際には必ずと言っていいほど風呂桶がアイテムとして使われてきたことで、市民やファン、サポーターも身近に感じていたのだろう。昨シーズンの初優勝を彩ったヒノキ製の風呂桶はインターネットで爆発的な人気を呼び、3000個以上を売り上げるという、予期せぬ後日談まで生み出している。

選手が登場の『算数ドリル』なども作成
地域貢献度1位のチームへと成長

 苦手とする子どもたちが多い算数を楽しく学んでほしいという願いを込めて、フロンターレの選手たちが各ページに登場する『算数ドリル』を作成。市内すべての全小学校および特別支援学校に配布する事業もすっかり定着し、ドリルを題材とした子どもたちと選手の交流授業も頻繁に行われている。

「選手たちにそこまで負担を強いらせないといけないのか、という声も実際に聞こえていました。そういうことをやっているから勝てないんじゃないかと思う人もいたはずですけど、そういう目標や指針があるからこそ頑張って来られたし、このフロンターレでタイトルを取るのが僕たちの悲願でもあったので。試合を見に来た皆さんがハッピーになって帰れるような、ピッチの外と中とでエンタメ要素が盛りだくさんのチームが優勝したことで、またひとつ新たな歴史を作れたと思う」

 昨シーズンの初優勝後に、中村はこんな言葉を残した。