不誠実は名車をもおとしめる

 私なりに解釈を加えるならば、誠実には大きく2つの意味がある。
 ひとつは、噓、偽り、ごまかしがなく、ひとに対して思いやりのある行動や考え方だ。信実あるいは真心である。

 もうひとつは、倦(う)まず弛(たゆ)まず。
 みずから頭を使い体を動かし、知恵を出し汗をかいて何かをなすことだ。
 すなわち、手間を惜しまずに何かをつくり出すことだ。

 誠実は、真心と手間の2つから成り立っているのではないか。

 まず、ひとつめの真心。

 真心のある言動は、お客さま、取引先、地域の皆さま、そして社会から信用と信頼を得ることができる。

 このところ、「誠実」でない、すなわち真心のない組織や企業がとんでもない状況に追いこまれた事例が相次いでいる。

 海外では、フォルクスワーゲンが、なんと排ガス規制に関して会社ぐるみで不正を行っていたことが大きく報道された。

 日本でも、東芝の不正会計が発覚し、歴代3社長が責任を問われている。会社自体も致命的なまでに信用を失墜した。

 マンション杭打ち不正事件では、旭化成建材によるデータ改竄(かいざん)が大きな問題となり、責任をとって親会社の旭化成社長が辞任した。

 これ以外にも、名のある少なくない企業が信用を大きく失墜させるような事実が明るみになっている。

 しかし、よく見ると、事件発生だけで経営破綻(はたん)した事例はきわめてまれだ。
 経営破綻やそれに近い状況にまで追いこまれた企業に共通するのは、事件発生後の対応のまずさにある。

 事件や事故は、ないにこしたことはないが、人間のやることだから、図らずも事件や事故が起こってしまう。

 そのとき、上司や本社、利害関係者、世間に正直かつ迅速に報告あるいは発表を行うことが、その本人や企業を危機的状況から救うための唯一の行動だ。

 事件や事故の発生は、当事者本人に相応の処分がなされるだろうし、業績を悪化させ、企業イメージを損なう。
 しかし、それは一時的なものであり、事件や事故に限定的なものとなる。

 ところが、事件や事故の虚偽報告や隠蔽(いんぺい)工作は、企業の信用を回復不可能なところまで失墜させる。
 企業の存続そのものを危うくする。

 経営破綻を招くのは、事件や事故ではなく、その後の噓、偽り、ごまかしだ。

 誠実でないことが、企業にとって最大の財産である信用を地の底まで落とすことになる。

☆ps.
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