人事評価は差をつけなくては意味がない

短期的に業績を求めるような外資系は、常に業績を出さなければいけないので、常に改善、改善です。悪いところを長期的に放っておいたりできません。だから、少しでも業績が悪くなったり、戦略が変わって事業の優先順位が下がったりすると、どんどんリストラして行くのです。

毎年、評価が悪い人が会社を去るのは、外資系では当たり前のことです。ところが、日本企業ではそれを毎年やらずに、まとめてやろうとするから、数百人、数千人、などという規模になってしまうのです。普段から人も資産も、貢献しているかどうかを定期的に厳しく見直すというサイクルを作れば、日本企業も同様に定期的に人の入れ替えができるでしょうし、実際に実現できている日本企業もあります。ただし、多くの日本企業では、評価の仕組みに大きな問題があります。

外資系では、多くの場合、評価は5段階に分かれています。上からそれぞれ、10%、20%、40%、20%、10%といった具合です。最も高い評価の人たちが全社員の10%いる一方で、最も厳しい評価の人たちも10%いるわけです。5段階評価で、高い評価と低い評価の社員が同数なので、評価が明確に分かれるのです。

そうすると、リストラをする時には、考え方はシンプルです。低い評価の10%+20%の社員が対象になるわけです。ところが日本企業では、実質的に評価が3段階になっていることが多いのが現実です。例えば上から、20%、70%、10%、という割合です。この場合、社員の約7割は真ん中の、高くも低くもない評価になっています。要は、差が付けられていないのです。こうなると、リストラは、ましてや大規模なリストラは、かなり実行が難しくなります。

なぜなら、一番下の10%だけではリストラの人数が足りなくなるからです。そうすると、7割いる真ん中の評価の社員から、リストラ対象を選定しなくてはいけなくなります。ところが、この7割は全員、良くも悪くもない、「B」とかの評価だったりするわけです。

この人たちをリストラの対象にすると、評価が悪くないのに、どうして異動や降格、退職を勧められたりするのか、となりかねません。これは致命的な問題になります。社員の評価を白黒はっきりつけないことは、もしかしたら働く側にはありがたいことかもしれませんが、結果的には、「評価は良かったのに、なぜ私がリストラ対象?」という、とんでもないことにつながっていく可能性があります。それは、もちろん経営側にも、大きな痛手になるのです。