450億円の財源不足に対し、490億円の財源を確保

 36歳の若い市長の存在は、市役所に出入りされる業者のみなさんにとっても、面倒なものであったはずです。
 市長になってから、さまざまな改革を行ないました。

 役所には、少子高齢化にともなって社会保障の経費や公共施設の改修費用が毎年大幅に伸びる一方で、子育て支援などの新たな財源も必要になっているという課題がありました。そこで、素人の私ではチェックできない分野までしっかりと専門的な目で精査するために、外部の有識者を入れた会議を9回にわたって開催して、「行財政改革プラン」を策定したのです。

 これによって450億円の財源不足に対して490億円の財源を確保し、それまでの4倍のペースで保育所を整備し、子ども医療費助成の拡大などを行ないました。

 もちろん職員数を減らしたり、未利用地を売却したりするなど役所内部でできることは率先して行ないましたが、それだけでは賄(まかな)えません。使用料を適正な額に上げたり、目的が薄らいだ公共施設を廃止したり、補助金の削減もしました。こうした見直しを行なえば、かならず誰かの痛みがともないます。恨みも買います。

 また「随意契約」という、行政が任意で事業者を選んで契約する手法は、「官製談合」の防止や特定の業者が契約を独占しないためにできるだけ避けるべきとされています。私はこの「随意契約」の総点検にも着手しました。そして外部委員会とも協議を重ねて、147億円の見直しを決めて、順次「競争入札」といった透明性や競争性の高い契約方法に変更しました。

 また、外郭(がいかく)団体との契約見直しは46億円で、このうち9割を競争入札に切り替えました。
 このようなさまざまな行財政改革を30代の新人素人市長がどんどんするのですから、おもしろく思わない方も多かったのかもしれません。ちなみに、ちょうど偶然にも同時期に不審な車が家の前で見張っていたり、役所への行き帰りに車で尾行されたりすることも続いたため、行き帰りをパトカーが先導してくれた時期もありました。秘書に対して「殺す」という脅しの電話もありました。こういったこともあり、今では朝、家を出てから帰宅するまでのあいだ、県警のSPが付いてくれています。

 このような形で、私の「福岡市を経営する」という挑戦が始まったのです。

次回は、「大変だと感じたときに自分にかける言葉」についてお伝えします