友だちは誰か。苦しいときにこそ見えてくる
選挙活動を続けていると、そのうち全身が「高感度アンテナ」のように研ぎ澄まされていきました。お会いした人の細かな目の動き、声色、しぐさ、ちょっとした言葉の使い方などで、その人が何を考えているのかが手に取るようにわかるようになってきたのです。「高島さん、応援してます!」と声をかけていただいても、本心なのか、うわべの言葉なのか、敏感に感じとれるようになりました。
残念ながら、「陰ながら応援しています」と言った方は、ほぼ全員、選挙が終わるまで本当に「陰」に隠れてしまって姿を現しませんでした。もしかすると対立候補にも「陰ながら応援しています」と言っていたのかもしれません。
いずれにしても、「キャスターである高島」とはつき合っても、「選挙に立候補した高島」となると違ってくるのでしょう。私が落選したときのリスクを考えると、その行動はある意味当然なのかもしれません。
いよいよ選挙告示の1週間前。
当時、私の番組でアルバイトをしていた大学生の松藤淳一(まつふじじゅんいち)くんが、紙コップとジュース、スナック菓子を用意し、500円の会費で決起大会を呼びかけてくれました。その告知を見た20人の市民の方が選挙事務所に駆けつけてくれました。
一方、まったく同じ時間に、現職の市長はホテルニューオータニ博多の会場で2000人を集めた経済界主催の決起大会を開催していました。取材に来ていた記者が、聞いてもいないのに相手陣営の大盛況な決起大会の様子や来賓の名前を刻々と報告してくれます。その名前の中には、こちらの応援をしてくれていると自らおっしゃっていた方の名前もありました。「100倍の人数の差があるから、それを逆転する夢があるんだ」と、私は取材に来た記者に強がりましたが、さすがに告示1週間前ですから不安にもなりました。
そしてついに投票日。
開票結果は、私が現職に約6万5千票の差をつけて勝っていました。では、あの決起大会の人数差はなんだったのか……。この一連の選挙活動や投票結果は私にとって非常に貴重な経験になりました。