Twitterで5万人超、noteで3万人超のフォロワーをもつハヤカワ五味さん(株式会社ウツワ代表取締役。@hayakawagomi)は、どのようにミスリードしないコミュニケーションを学んできたのでしょうか? 胸が小さい女性向けの下着ブランド「feast」など、熱狂的なファンをもつアパレルブランドを大学生時代に立ち上げた経営者のハヤカワさん。書籍『マーケティングの仕事と年収のリアル』発売を記念した著者・山口義宏さん(インサイトフォース代表取締役。@blogucci)との特別対談にお迎えし、この後編では、ハヤカワさんの社内外でのコミュニケーション力をどのように鍛えてきたのか、またハヤカワさんに代わるマーケティング人材のいくせいについて盛り上がります。(撮影:疋田千里)

もっとググって、いいものはどんどん真似すべき

山口義宏さん(以下、山口) ハヤカワさんが楽しみながら経営を学習するポイントは、商品・サービスの裏にある意思決定の仕組みを知るところにあるんですね(前編参照)。ただし、普段から身の回りにある商品・サービスを見ていて、売れる仕組みや背景を自分なりに考えて「咀嚼」できるかどうかというのは、できる人とできない人、習慣がつく人とつかない人ですごく差があるんですよ。ハヤカワさんにその習慣がついたのは、生まれつきなのか、家庭環境なのか、後天的なきっかけなのか、何の影響が大きいと思いますか。

ハヤカワ五味さん(以下、ハヤカワ) もともとですけど、そのもともとがいつかといえば、ゲームの攻略法を調べたりするのが好きだったんですよね。一時は、電卓片手にドラクエ(ドラゴンクエスト)をやっていた時期もあったぐらいです。ダメージを計算して最短の手数で倒すために(笑)。

山口 けっこうヤバイですね(笑)。

ハヤカワ五味(ハヤカワ・ゴミ)さん
株式会社ウツワ代表取締役
キュ〜トでクレバ〜な経営者。ランジェリーブランド feast/ワンピースブランド ダブルチャカ/ラフォーレ原宿 LAVISHOP等を運営している。服という”纏う哲学”についてと、”透明な売上を立てる経営”を日々考えている。来春、著書を刊行予定!(Twitterアカウント:@hyaakawagomi/noteアカウント:https://note.mu/hayakawagomi/株式会社ウツワHP:http://utw.co.jp/)

ハヤカワ おそらく、咀嚼好きの原点は、そのあたりにあると思います。あと最近、スタッフを育てる土壌をつくりたいと思っていてすごく感じるのは、ググる癖がない人が多いことです。私は気になったらすぐ調べてしまうんですけど、「手軽に検索して調べるのは、よくないこと」という刷りこみが強すぎるのか、ググって自分で調べようとする人がすごく少ない。「どうやったら社長になれますか」ってよく聞かれるけど、ググったら出てくるじゃないですか。「真似る」から「まねぶ」になって「学ぶ」という言葉ができたと言われるぐらいだから、私はどんどん真似たらいいと思う。そのカルチャーは重要だと思いますね。

山口 一般論として、ゼロイチで生み出されたものや嗜好品みたいな文化度の高いブランドの世界だと、ビジネスや数字の話をすると嫌がられがちじゃないですか。インディーズバンドがメジャーに行って「魂を売り渡した」と言われるのと同じような悪口を言われやすい。ハヤカワさんの場合、そういう見られ方に困ったことはないですか。

ハヤカワ 最初の頃、3年ぐらいはすごくありました。18-19歳だった頃、プロのデザイナーさんからすれ違いざまに「お前がやってるのは、ファッションじゃない」って言われて(こわっ)と思ったこととか。でも、最近変わってきた気がします。お互いを理解して尊重しあうような空気が出てきたんです。私自身も、ファッションクラスターがどういう価値観のもとで動いているか尊敬を払うようになりましたし。

山口 著書『マーケティングの仕事と年収のリアル』でマーケティング業界には流派の違いがあって、それを知ると自分のキャリアを築くうえでも、別の流派の人と仕事をするうえでもラクになる、と書いているんですが、ハヤカワさんも互いの流派の違いを理解したらラクに共存できるようになったんですね。

ハヤカワ 私が相手を理解するきっかけになったのは、去年の秋口に予算を25万円ぐらい組んで、自分の服を総入れ替えしたことです。知り合いのスタイリストについてきてもらって、伊勢丹の端から端まで教えてもらいながら、全部買い揃えたんです。そうすると、会社の経営や財務を知るには株を買うのが早道と言われるのと同じで、そのブランドのポリシーや背景の社会・文化に興味もわいてくるし、ファッションクラスターがどういう動きをしてどういう価値観で評価されているのかが分かるようになってきて。私の立ち位置は別の場所にあるけど、素直に尊敬する気持ちになりました。

ビジネスに貢献する露出と、自分のブランド力を高める露出

山口 互いの理解が進んだ背景として、ハヤカワさんが露出を増やされて、人柄や経営への姿勢がより深く伝わった効果もあったんじゃないかと思うんですが、メディアに出られるようになったタイミングはいつごろからですか。

ハヤカワ 最初にメディアに出たのは早いんです。「女子高生デザイナー」とすごく取沙汰された時期があって、そのときに痛手を負ったというか事故りまして。たとえば、テレビ局で「スカートをめくる演出をしてくれ」と言われて、嫌だったので以降は出演拒否したら、それをネタにされたり。一番組、炎上させて終わらせたこともありました。それから2年ぐらいメディアには出ていなかったんですけど、ちょうど「AbemaPrime(アベマプライム)」のというニュース番組の準レギュラーとして、池澤あやかさんと週替わりで2週間に1回出ないかというお話を頂いて。勉強のために久しぶりに出てみようかと思ったら、メインキャスターのショーンKさんが経歴詐称で炎上して出演取りやめになってしまって。

山口 ありましたね。

ハヤカワ メインキャスターがいなくなっちゃったので、池澤さんと私が代役になったのですが、お互いMC経験もないし大変でした…。その流れで今2年半ほどやらせていただいて、どう発信したらミスリードしづらいかといった点は非常に勉強になりましたね。自分はコミュニケーションが苦手なほうなので、マスに向かって話すときだけじゃなく、社員とのコミュニケーションをとるうえでも参考になってます。

山口 義宏(やまぐち・よしひろ)さん
インサイトフォース代表取締役
東証一部上場メーカー子会社で戦略コンサルティング事業の事業部長、東証一部上場コンサルティング会社でブランドコンサルティングのデリバリー統括などを経て、2010年にブランド・マーケティング領域支援に特化した戦略コンサルティングファームのインサイトフォース設立。大手企業を中心にこれまで100社以上の戦略コンサルティングに従事している。著書に『デジタル時代の基礎知識『ブランディング』「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール』(翔泳社)など。東京都生まれ。

山口 ハヤカワさんのことだから、ビジネスに貢献する露出と、自分自身のブランド力を高めるための露出を、意識してコントロールされているのかなと予想したんですが、どうですか。僕はハヤカワさんのブランドのターゲット層ではないのでブランド自体は視界に入ってきづらいのですが、ハヤカワさん自身のメディア露出はすごくよく目に入ってくる。ビジネスと個人の露出を、どんなタイミングでどうやってつなげるか、考えておられそうだなと。

ハヤカワ 「ハヤカワ五味」は一つのコンテンツだと考えて、1年半ぐらい前から舵を切っているんです。それまでは、たとえば弊社のデザイナーから「私がデザインしているのに、ハヤカワさんばかり賞賛されるなんて!」と不満をもたれることもあって、個人の露出は控えようかとも考えたんです。でも、キャリアを積んだ女性の一人として私が外に出ることは、多様性の象徴だったり自己肯定感を上げるという会社のビジョンにも紐づいているんじゃないかと思って。高校生のとき痛い思いをしたぶん、自分の本音と見え方のバランスをコントロールする力はおそらく私が周りの誰より強いので、このまま自分が出ていくのが得策だという結論に至ったんです。

山口 ご自身からみて、その決断はいい方向に向いていますか。

ハヤカワ そうですね。顕著によかったと思うのは採用です。初期のころは私が露出の仕方をミスしたせいで、「ハヤカワさんのところに行けば、なんとかしてくれそう」と思う依存型の方ばかりが応募されてきたんですよ。でも今はがっちり経営している感じを強く出しているので、「一緒にブランドを育てたい」という積極的で自立した方が応募してくれるようになりました。