「耳が痛い意見」を素直に受け止める
こうして「チームのもったいないところ」についての意見が出そろったところで、マネジャーに注意していただきたいことが2つあります。
第一に、メンバーから出される付箋の内容を素直に受け止めることです。
というのは、付箋のなかには、マネジャーが「よかれ」と思ってやっていることが否定的にとらえられていることもあるからです。そのような指摘があると内心苦しいですが、つらい気持ちをグッと抑えて、素直に受け入れることが大切です。もしも、そのような意見に対してネガティブな感情を表現してしまえば、チームの「心理的安全性」を傷つけてしまいますから、十分に気をつけていただきたいと思います。
逆に、自分に対する否定的な意見を素直に受け止めることができると、それだけで大きな効果を生み出すこともあります。
たとえば、私たちがコンサルティングに入ったチームではこんなことがありました。
メンバーから、「会議が長い」「しゃべりすぎる人がいる」といった意見が相次いだのですが、“犯人”は明らかにマネジャー。本人はたいへんショックを受けていましたが、黙ってメンバーの話に耳を傾けていました。
そして、こう問いかけたのです。
「どうすれば、会議でしゃべりすぎるのをふせぐことができるだろうか?」と。すると、「発言時間の上限を設けて、キッチンタイマーで知らせるのはどうですか?」という解決策が出て、みんなが賛同。マネジャーも、その場でその解決策を採用することを決めたのです。
会議に同席していた私は、この瞬間に「カエル会議」に対するメンバーの姿勢がグッとよくなったのを実感しました。メンバーたちが、「言いたいことを言っていいんだ」という安心感を得るとともに、「マネジャーは本気でチームをよくしようと思っているんだ」という信頼感をもったからです。
第二のポイントは、メンバーから出された問題点に対して目をそむけず、解決しようとする姿勢を見せることです。
これは、非常に重要なポイントです。せっかく問題点を出したにもかかわらず、マネジャーが共感を示し、解決に向かって動こうとしなければ、メンバーは「なんだ、本気じゃないのか?」と思い、「カエル会議」への期待が一気にしぼんでしまうのです。
逆に、マネジャーが積極的に解決しようとする姿勢を示せば、メンバーの気持ちも乗ってきます。
もちろん、「経験豊富な人に業務が集中している」といった大きめの課題を解決するためには、いくつかのステップを踏んでいく必要がありますので、そのような場合には、「たしかに、そうですね。この問題は、今後『カエル会議』で具体的に検討して解決策を考えましょう」と、議題として取り扱うことを約束するといいでしょう。
しかし、すべての案件を次回以降の「カエル会議」に持ち越してしまうと、議論が進んでいる感じがしません。出された付箋のなかには、マネジャーが決断すれば、簡単に解決できることもあるはずです。そうしたものについては、その場で解決策の提案を呼びかけるのがいいでしょう。
たとえば、「“課内飲み”に参加できない人もいるので不平等」という問題であれば、「これから“課内飲み”は17時開始にしよう。そうすれば、育児中のメンバーも参加できるんじゃないかな?」「夜は参加できないメンバーのために、お昼の時間帯に個室の取れるお店でランチ会をやるのはどう?」などとアイデアが出るはずです。そのなかで賛同者の多いアイデアを、実際にやってみればいいのです。
あるいは、「メールではなく電話での連絡が多いお客様の対応に時間が取られている」というメンバーがいれば、「この点については、今度私がお客様のところを訪問したときに依頼してみるよ」などと、率先して動く姿勢を示すといいでしょう。
このように、小さなことでも、「カエル会議」を通じて、「よい変化」が起きることを体験したメンバーは、「カエル会議」への期待を高めてくれるに違いありません。