2019年4月に罰則つき残業規制がスタートすることもあり、「働き方改革」は喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。
「ふだんは言えないこと」を吐き出す
チームの「働き方改革」を進めるためには、マネジャーがメンバーの働き方に口を出すよりも、メンバー全員で「どうすれば、みんなの仕事が効率化して、生産性が高まるか?」についてディスカッションをする「カエル会議」を始めることから着手することをおすすめします(詳しくは連載第15回)。みんなで考えて、みんなで実行するからこそ、実りのある「働き方改革」は実現するのです。
そして、連載第15回でご説明した「カエル会議」のグランドルールが決まったら、いよいよ「働き方改革」のキックオフです。
私たちがコンサルティングをするときは、企業にもよりますが、このキックオフに1〜2ヵ月ほどの時間をかけます。下図のように、「カエル会議」でメンバーとディスカッションを重ねていくイメージです。このプロセスは、いわば今後の「働き方改革」の初期設定となるもので、非常に重要なものだと考えています。
では、第1回の「カエル会議」では何をするといいのでしょうか?
私たちがおすすめしているのが、「チームの素晴らしいところ」と「もったいないところ」を付箋を使って共有することです。これは、いわばウォーミングアップ。狙いは大きく2つあります。
第一に、それぞれのメンバーがチームに対して感じていることを出し合うことで、ざっくりと「これからも大事にしたいこと」「これから変えていきたいこと」を共有すること。第二に、普段はなかなか言い出せなかったことを吐き出すことで、「こんなことを言っても許されるんだ」と、「心理的安全性」を感じてもらうことです。この2つが達成できれば、出発点としては大成功と考えていいでしょう。
とくに大切なのは、「チームの素晴らしいところ」を出し合うことから始めることです。いきなり、「もったいないところ」=「チームのネガティブなところ」を指摘するのは、かなり心理的ハードルが高いものです。自分の発言が誰かを傷つける心配もあり、遠慮して「本音」を言い出せず、モヤモヤが残ることになりがちです。
一方、「素晴らしいところ」については、誰かを傷つける心配がないため、比較的容易に発言できます。そして、お互いに「チームの素晴らしいところ」を出し合うことによって相互承認が進みますから、その後であれば「もったいないところ」についても本音を言いやすくなるわけです。
会議の冒頭で、マネジャーがこのように呼びかけるといいでしょう。
「今日は、皆さんが、このチームについて感じていることを出し合ってみたいと思います。まず、このチームのどのようなところが『素晴らしい』と思うのか付箋に書いていただけませんか? 一点お願いしたいのは、『このチームは〇〇』などとチームを主語にしてもらうことです。よろしくお願いします」