チームの「本来の目的」を深掘りする
そこで、再び「カエル会議」で「本来の目的」を掘り下げてもらうことにしました。
ここでのディスカッションが非常に有意義なものになりました。いろいろな意見が交わされるなかで、「そもそもなぜ、この仕事をやっているのか?」という問いが生まれ、最終的に「私がこの雑誌で仕事をしているのは、結婚したいと思う人を増やしたいから」「日本の少子化問題の解決にもつなげたい」というような意見に共感が集まったのです。みんなが、「そうだよね」「そう思うよ」と賛同。まさに、チームの「本来の目的」が深掘りされた瞬間でした。
さらに、議論は続きました。ということは、広告出稿のための営業が、自分たちの「本来の目的」ではないんじゃないか? だったら、むやみに営業件数を増やすよりもやるべきことがあるはずだ。それは、結婚を考えている人々が、結婚式に何を求めているのか、どんな夢を描いているのかを、もっと知ることではないのか?
それがわかれば、営業先の結婚式場に「いま、こんなニーズが高まっているから、こんな結婚式プランをやってみませんか?」と提案営業することもできる。そうすれば、営業先にも喜んでもらえるし、でき上がった誌面も読者に喜んでもらえるだろう。その結果、結婚に踏み切るカップルが増えるかもしれないし、ひいては少子化問題の解決にも貢献できるかもしれない……。
このように議論はどんどん深まっていったのですが、これが可能になったのは「カエル会議」を通じて、雑務に追われて疲弊している状況が徐々に改善されるとともに、心理的安全性が高まっていたからです。
そして、メンバー全員で、むやみに「営業件数」を増やすことに注力するのではなく、「結婚を考えている人々のニーズ」を調査する時間を増やすべきだという方針を決定。その時間を生み出すために「減らしたい仕事」をさらに圧縮するとともに、アンケート調査や勉強会を行ったり、婚姻数が伸びている市町村に視察に行くなどの活動を積極的に展開していったのです。
その結果、心の底から「意味がある」と思える仕事に注力できることから、メンバーのモチベーションが向上。「行動の質」も高まったことで営業成績がさらに上がり、チームの生産性も劇的に向上したのです。
私は、これこそが「働き方改革」だと考えています。
「何のために働いているのか?」、その本質を、メンバーとともに深く掘り下げる。そして、みんなが共感できる「本来の仕事」を明確にできさえすれば、あとは簡単。試行錯誤を繰り返しながら、「増やしたい仕事」に注力する時間を増やすために、「減らしたい仕事」を圧縮していけばいいのです。
ただし、先ほどの例にもあったように、必ずしも一回の「カエル会議」で「これだ!」と思える結論にたどりつく必要はありません。それよりも、まずは一度みんなで「本来の目的」を掘り下げてみる。そして、なんらかの「仮説」をもとに「働き方」を変えてみる。それでうまくいかなければ、再び「本来の目的」を掘り下げてみる。このサイクルを繰り返すことで、必ず本質にたどりつくことができるはずです。