夜は私のベッドで寝ることが多い2匹は、1匹が私の頭のほう、もう1匹が足のほうと見事に棲み分けをしている。
 ある夜、猫たちがいつものポジションで寝ているのを確認してから、足のほうに枕を移動させて、いつもとは逆に寝てみた。

 すると……。

 しばらくすると、足が好きな猫はやっぱり足のほうへ移動してゆく。
 いつの間にか頭好き猫も、頭のほうへと場所を変えていた。

 そして、いつものように朝の5時を過ぎると、足好き猫が私の身体の上をのっそりと縦断して(これで私は毎朝完全に目が覚める)、頭のほうへ移動し、上から顔をのぞきこむ。
 目を合わせないように寝たふりをしていると、今度は顔好き猫のほうが床を走り回りながらニャーォと鳴く。
 お互いが自分の得意な分野で、朝ごはんという1つの目的のためにせいいっぱいアピールをしているのだ。

 やはり嫉妬の感情に悩むよりも、自分と他人の個性を過不足なく認め合って共同戦線を張ったほうがよい結果を生むことになりそうだ。

吉田裕美(よしだ・ゆみ)
東京都生まれ。東京学芸大学教育学部初等教育国語科卒。在学中に文部省給費にてパリINALCO(国立東洋言語文化研究所)留学。リサンス(大学卒業資格)取得。日仏両国で日本語を教える傍ら翻訳、通訳に携わる。地域猫ボランティア活動に関わり、これまで多数の猫を預かり里親へ橋渡ししてきた。現在、2匹の愛猫とともに暮らしている。