“居る気”から“やる気”になった
古参社員

昔はわが社も、「退職金をもらって早くリタイアしたい」と言う社員が多かったように思います。

しかし、“人生100年時代”と言われるようになって、社員の意識が変わってきました。

驚いたのは、古参社員のひとり、大崎寿行が“居る気”から“やる気”になったことです。

大崎は1991年度入社で、当時としては過去最高学歴の持ち主。
しかし、若い頃に病気を患(わずら)ったこともあり、ほどほどにしか頑張らず、
会社に席があって最低限の給料だけもらえればいいという
“居る気”社員でした。

昔の武蔵野は超ブラック企業でしたが、
大崎は定時でタイムカードを押して帰り、土日も絶対に出勤しなかった。
ひとりホワイト社員でした(笑)。

もちろん、万年平社員ですが、私はそれでもいいと思っていました。
もし大崎をクビにしたら、頑張っている他の社員がビリになってしまう。
大崎のように出世をあきらめている社員がビリにいたほうが、組織は丸く収まります。

ところが、昨年、私が「平社員は再雇用しない」と冗談で言ったら、目の色が変わった。
そのとき大崎は57歳。
3年以内に課長にならないと再雇用してもらえないと“勘違い”して、
急に日曜の研修に出席し始めた(日曜の研修出席者は平日に代休)。

私は、「大崎は早く定年を迎えてのんびりしたいタイプ」だろうと思っていました。
実際、昔はそうだったのでしょう。

しかし、人生100年時代になると、第二の人生の生活設計を否が応でも考えざるをえなくなる。
大崎は定年後もできるだけ会社に居続けたいと考え、
急に“やる気”社員になった。

今年、大崎は念願の課長になりました。

もともと潜在能力はあっただけに、やる気になれば結果を出せる。
社長としてはもっと早くやる気になってほしかったですが、
定年間際になってお尻に火がつくまで本気になれなかったのでしょう。

さらに悪影響が出始めました(笑)。

“居る気”と“手抜き”を兼ね備えた境幸二(48歳)が課長を目指しだした。

いまの時代、社員が喜ぶのは目先の退職金より長期の再雇用制度です。
退職金より、なるべく長く雇ってあげたほうが社員の幸せにつながります。