銀行業界最大手、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)のトップ人事が波紋を広げている。平野信行社長の後任に、傘下銀行の三毛兼承頭取を充て兼務させる方針を固めたためだ。
持ち株会社と銀行のトップ兼務を巡っては、FGが助言機関のような位置づけになり、「持ち株会社としての機能が弱く、企業統治(ガバナンス)上問題が多い」(金融庁幹部)。そのため持ち株会社による経営の監督と、傘下会社の業務執行は明確に分離すべきというのが、日米監督当局の立場だった。
形式的なことより、実質的にガバナンスが利いていれば兼務は問題ない――。三菱からはそうした言い訳が聞こえてきそうだが、もはや説得力に乏しい。
なぜなら、兼務体制を敷くことの最たる要因が、昨年の小山田隆氏の電撃辞任にあるからだ。平野社長の後継者だった小山田氏が昨年、体調悪化を理由にわずか1年余りで頭取を退任したことで、グループ内の「バランス人事」の歯車が大きく狂ってしまい、今になっても軌道修正がきかなかったわけだ。