また、手術以外にも放射線治療、内分泌療法、化学療法があり、どの方法が良いかは、(1)身体所見や画像診断から判断する病期、(2)生検で採取したがん細胞の組織像の悪性度:グリーソンスコア、(3)腫瘍マーカーであるPSA値、の3つを指標にしたリスク分類を参考にして決めていきます。

 発病時の年齢、期待余命(これから先どのくらい生きられるかの見通し)、患者さんの治療に対する考え方、なども、治療法の選択をする上で大切になります。治療によって生活の質の低下に加えて妊孕性(にんようせい:生殖能力)を失うことにもなるからです。

 そのようなことを背景にして、前立腺がんの他の治療法として、「すぐに治療を始めない監視療法」や、手術と監視療法の間に位置する「フォーカルセラピー」という新しい治療概念があります。

 例えば、がんが前立腺内にとどまっていて、リスク分類で低リスクと判断された場合には、手術や放射線治療をせずに、監視療法を選択することもできます。監視療法は、前立腺がんの動向をしっかりと監視して、PSA値が上昇し、腫瘍の増大が認められたら、手術などの積極的治療に進むか改めて検討する方法です。

 そのメリットは、そもそも治療をしないので、手術や放射線治療による排尿障害や性機能障害などの機能障害が生じる心配は全くなく、これまでと変わらない生活が送れることです。がんの進行が遅いほど治療しないメリットは得やすくなります。

 一方デメリットは、がんが進行する恐れがあり、その不安に常にさいなまれることになりかねないことです。進行の早いがんほど治療をしないデメリット、リスクは大きくなります。

監視療法を選択する上で
重要なインフォームドコンセント

 監視療法は、単にがんを放置する治療法ではありません。何もしないわけではなく、定期的に腫瘍マーカーである血中PSA値を測定して、変化の様子を見守っていきます。PSAの検査は3~6ヵ月ごとに実施します。また、MRI検査や組織生検も1~3年ごとに行います。万が一病状に明らかな悪化が見られた場合には、改めて積極的治療を実施するかどうか検討します。

 血液検査で判定できる腫瘍マーカーのPSA値は非常に感度が高く、特に治療しなくても命に関わる心配はないものも「がん陽性」と判定されることがあります。例えばPSA値が陽性であっても、病期が早期で、組織的悪性度の指標であるグリーソンスコアが低い「低リスクがん」の場合、10年生存率は治療を行っても行わなくてもほとんど変わらないといわれています。すなわち、比較的高齢な方は、病態の進行や変化を掌握して臨機応変に対応する心構えや体制を整えておいた上で、手術などの積極的加療をせずにフォローをするというのも賢明な対処法かもしれません。