中国におけるiPad商標権をめぐり、Appleと中国のプロビューテクノロジーが係争中だが、AppleはiPhoneでも商標問題に頭を悩ませており、今後裁判に発展する可能性がある。
地元紙などの報道によれば、浙江省義烏市の照明器具会社が、2010年8月30日、「照明器具としてのiPhone商標」を申請した。Appleは中国で、携帯電話、コンピュータのハードおよびソフトウェア、オンラインエンターテインメントなど14分野で「iPhone」の商標登録をしているが、その中にはもちろん照明器具は含まれていない。そもそも照明器具にブランド名が必要なのかどうかが疑問だ。
Apple側は、「iPhoneはよく知られた商標であり、たとえ他分野の製品であっても、他社が商標登録するべきではない」と主張しているが、中国国家商標局は、現時点ではまだ照明器具会社の登録申請を却下していない。
チャイナデイリーによれば、少なくとも39の中国企業および個人が、iPadまたはiPhoneの商標を、ハイキングシューズから薬品、おむつに至るさまざまな製品分野で登録申請している。うち懐中電灯メーカーを含む6社については、なんと予備承認まで受けたという。
iPhoneで登録申請した浙江省の懐中電灯メーカーは、3ヵ月の出願公開期間の最終日にAppleから抗議を受けた。
同じく予備承認を受けたのが温州の皮革工場で、ベルトとハイキングシューズを専門につくっている。予備承認後に異議申し立てを受け、最終認可は保留となっている。
iPad商標が申請されているのは、こうした日常品だけではない。なんとガラス・レンズ類のメーカーや、床板やコンクリートのメーカーまでもが登録を申請しているのだ。iPadブランドの床やコンクリート(表面にびっしりとロゴでも入れるつもりなのだろうか)? ここまでくると、いったい何がしたいのか、中国メーカーの意図がさっぱりわからなくなってくる。
また2月末には、湖北省武漢市内の2ヵ所の倉庫で、AppleのロゴとiPhoneのブランド名が付いた「iPhoneガスコンロ」約700台が発見され、地元警察に押収された。これらは「偽iPhone」が理由ではなく、安全基準を満たしていなかったために押収されたようだ。
このガスコンロ、緑色をしたインチキなリンゴのロゴが付き、その横にデカデカと「iphone」の文字が。しかもつまみの部分には、ご丁寧にも「合格証」と書かれたこちらもロゴ付きの札がかかっていた。安全基準を満たしていないのに、いったい何に合格したのだろうか。
中国では、商標登録が安く簡単に行なえる上に、とにかく「早い者勝ち」だ。また米国では、申請する前に「その商標を確かに使用する」という意思を表明、あるいは証拠を提示する必要があるが、中国では全く使う意思がなくても登録できる。
専門家によれば、有名ブランド力の利用、あるいは金銭の獲得のため、商標登録を利用しようとする中国企業が増加し、商標権をめぐる争いが増えている。最近では、米プロバスケットボール協会(MBA)ニューヨーク・ニックスの新人スターで、台湾系アメリカ人のジェレミー・リン選手の名前を、中国のボールメーカー(バスケットボールやバレーボールなどを製造している)が、2010年7月に商標登録していたことが判明し、論議を呼んでいる。
中国進出を考えている、独自ブランドを持つ企業ができることは、とにかく迅速に商標登録をすること。そして、登録状況を常に監視し(他社が類似した名称で登録申請していないかどうか)、問題が発生した場合は詳細な記録をとる。こうした対策を取るしかないというのが、米国の商標に詳しい専門家らの主な見解である。
(岡 真由美/5時から作家塾(R))