共感した後に教訓を話す

もっとも、そう話す前に重要なのは、子どもが話したことに一度共感を示すことです。先ほどの親子の会話であれば、「ああ、そうなんだ。嫌いなんだ」といった後に、「どうしてだろう? どういうところが嫌い?」と聞いてあげるのもよいでしょうね。一緒になって悪口をいうのではなくて、子どもが問題にしていることをともに考えて、その上で何か教訓めいたことをいってあげることが大事です。

共感を示さないで、いきなり教訓を話しても子どもは聞く耳を持ってくれません。子どもが何かネガティブなことを話してきたときは、親は教訓めいたことを話す前に必ず共感を一度挟むようにしましょう。かといって、子どもの家来のようになって追従するということではありません。しっかりと指導するために、一度は共感をしたほうがスムースだという話です。

私の話で恐縮ですが、子どもの時分、「あの人、むかつく」というようなことを家でいうと、親から「そういうことをいっていると、将来すごくイヤな顔の大人になるよ」とよく脅されていました。人に対して思ったことは、「天に唾つばする」ということわざのようにみんな返ってくるんだと常々いわれていました。

当時は、「話のわからないつまんない親だな」と思っていましたが、もし「ああ、むかつくよねーあの子! わかるわ」とお友だちコメントで育てられていたら、(いま以上に……?)上から目線の人格になっていたとおもいますし、集団に適応することにももっと苦労していたのではないかとおもいます。

子どもと親が兄弟のように仲良く話をすることは楽しいことです。ただ、親はやはり親として子どもと接しないといけないときが必ずあるのです。それを忘れては、いくら仕事を削って一緒に過ごしても、結局は育児をしていることにはならないとおもいます。育児に大切なのは、時間ではないのです。