全国大会で国産ボールを使い
男女プロが初のアベック優勝

 地道な努力が実を結んだ象徴的な出来事は18年11月、全国大会の「ジャパンオープン」で初めて、同社の国産ボールを使った山本勲、松永裕美の両プロが男女でアベック優勝を果たしたことだ。

 現在、同社の最大の売れ筋は山本がその大会で使った「ナノデス」シリーズの「アキュライン ツアープレミアム2」(記事冒頭写真で加藤が持つボール)。通常は500個程度しか売れないことも珍しくない中、このボールは18年秋の発売後、既に2000個を超えるヒット商品となっている。

 ボウリングのボールは「コア」と呼ばれる中心部と、その周りを覆う「中球」、表面部の外皮に分かれる。先の商品では、ストライクを出すために不可欠なボールの曲がり方に影響する外皮に関し、ウレタン樹脂を熱する時間を長く取り、原料をしっかり固めてレーンを捉えやすくした。

 そんな日本エボナイトは創業100周年の節目を迎える今年、大手工作機械メーカーへ特注したボール加工用の切削機を新たに工場へ導入し、何十年も使っていた機械を入れ替えて攻めの生産体制を整える予定だ。まだ年間100個ほどだが、数年前に始めたアジアや欧州への輸出も増加傾向にある。

 国内ではブーム時に建ったボウリング場が老朽化で耐震性に難があり、建て替え費を捻出できず閉鎖が相次ぐなど厳しい状況。ボウリング人口は減少傾向だが、加藤は「お客の信頼をつかめば伸びしろはあるはず」と前を向く。実際、今年は冒頭の桑田が旗振り役となった国内最大規模のボウリング大会「KUWATA CUP 2019」が大盛況に終わるなど、にわかに再ブームの気配も漂う。

 追い風が吹く中で、加藤は脈々と受け継がれてきた「最後の生き残り」としての責務をかみしめている。今後も国産メーカーとしての威信を懸け、米国製のボウリングボールを凌駕する製品作りに挑み続けるつもりだ。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)

【開発メモ】ボールの「コア」
「外皮」に加え、「コア」と呼ばれる中心部の形によって、ボールの曲がり方が大きく変わる。同社では過去30年で計100種類以上のコアを開発。ボールを急激に曲げたい場合は長細い形、緩やかに曲げたければ球状に近づけるなど特徴がある。外国人より非力でスピードや回転数が少ない日本人向けにコアの比重を大きくし、回転数を補うなどの工夫も。

ボールのコアPhoto by K.T.