「もうマンションを買ってもいいかな。でも損はしたくないし、ローンも怖い」。
そんなあなたが買うべきは、「60m²前後」×「駅徒歩7分以内」×「2001年以降完成」のマンションしかありません。

70~80m²に比べ、60m²は価格が手ごろで、売ることや貸すことになったときでも、“守備範囲が広い”ので「売りやすく、貸しやすい」のです。

入居を希望する人たちは「夫婦2人」から「子ども1人の夫婦」に加え、「夫婦と小さな子ども2人」、「シニア」、「1人暮らし」、「兄弟姉妹」、「母子または父子家庭」などと、非常に幅広いのです。自ら住む層だけではなく、「不動産投資」や「相続税対策」などの需要もあります。

本連載の書き手は、「不動産ひと筋30年! 12000人と面談し、成約件数は6000件以上」という圧倒的なキャリアを持つ後藤一仁氏。不動産仲介会社の“現役”社長です。「不動産を通じて、1人でも多くの人に幸せになってほしい」という願いが込められた『マンションを買うなら60m²にしなさい』の著者でもあります。「損をしない、戦略的なマンション選び」を語ってもらいます。

70~80m2の中古マンションは、1~3月を逃すと「売りにくく、貸しにくい」

 前回の記事で、「60m²マンションは守備範囲が広く、売りやすく、貸しやすい」というお話をしました。

 本日は、70~80m²マンションの「売りにくさ、貸しにくさ」についてお話しします。

なぜ売りにくいのか

 70~80m²のマンションは、子どもの入学・進学に合わせた時期(1~3月)に需要が集中することが多いです。

 また60m²と比べると、面積が広い分、価格が高くなりがちです。

 例えば、資産性の維持がある程度期待できると思われる、都心の坪単価250万円のエリアで考えてみましょう。広さ以外の条件が同じ場合、80m²(24・20坪)のマンションは6050万円ですが、60m²(18・15坪)のマンションは4537万円。そして57m²(17・24坪)であれば4310万円で購入できます。

 35年全期間固定金利2%で、頭金1割を入れて住宅ローンを組んだ場合はどうでしょう。

 6050万円の80m²マンションでは、月々の返済が18万372円ですが、4319万円の57m²マンションであれば12万8496円で済みます。

 また仮に、都心の60m²と郊外の80m²が同じくらいの価格であった場合でも、「利便性のよい都心の60m²」と「郊外の80m²」を比べると、前者のほうが売りやすく、価格も下がりにくいです。

なぜ貸しにくいのか

 70~80m²のマンションは、貸すときは売るとき以上に、子どもの進学や入学にあわせた1~3月の時期に需要が集中します。

 立地にもよりますが、万が一、5~8月などの閑散期に賃借人が退去して、その時期の募集となってしまうと、次の入居者を決めるのに相当苦労します。

 秋の繁忙シーズン(人事異動や結婚によって入居希望者の多い9~11月)であっても、学校の関係などからなかなか決まらないことがあり、場合によっては、次の春の繁忙シーズンが来るまで1年近く空室が続いてしまうことがあるのです。

 もちろんその間の賃料は入ってきません。しかも住宅ローン、管理費・修繕積立金、固定資産税等の負担はそのままです。

 数ヵ月間空室が続くと、負担は数百万円にも及ぶことがあります。1年近くも空室が続くと、排水トラップ内の水も乾燥して排水口から臭気や害虫がわいてきたり、居室内の空気がよどんだりします。ときどき水を流したり、空気の入れ換えに現地まで出向く必要があります。

 先ほど仮定した80m²マンションの場合、月の支払額は20万円を超えます(住宅ローン返済18万372円/月、管理費・修繕積立金合計額が計2万8000円/月[350円/m²として計算]、固定資産税等が1万3700円/月割。合計22万2072円)。そのため賃料は、最低でも24万~26万円以上で貸さなければ赤字になる可能性があります。

 空室期間や、入居者入れ替わり時のハウスクリーニング費用、専有部分内の経年変化修繕費などを考慮すると、それよりもっと高く貸さなければリスクヘッジできないでしょう。エリアにもよりますが、25万円近くの賃貸マンションを借りる層は、そう多くはありません。今後はますます厳しくなっていくでしょう。

 対して、60m²のマンションの場合、月の支払額は16万円弱です(住宅ローン返済12万8496円/月、管理費・修繕積立金合計額が計2万1000円/月[350円/m²として計算]、固定資産税等が1万円/月割。合計15万9496円)。賃料も17万~18万円前後となり、層が一気に広がります。そういった意味でも、60m²は80m²に比べて貸しやすいのです。