普通に考えるとこれは不思議だ。自分で選んだ商品を忘れてしまった人が3割もいるというのはちょっと考えにくい。ところが実際は加入に当たって、どの商品を購入するかを決める「配分指定書」を提出しない人が一定割合いるのだ。

 その場合、多くの企業において、あらかじめ定めた商品を自動的に購入するような仕組みにしていた。これを「未指図商品」というが、未指図商品の多くは元本確保型の定期預金などに指定されている。すなわち、結果として加入者自らの積極的な意思ではなく、自動的に元本確保型商品で運用されているという人が少なからずいるということだろう。

 ではなぜ、このように自分で商品を選ばない人たちがいるのだろうか。

「情報負荷」による思考停止

 結論からいうと、これは「選ばない」のではなく、「選べない」のだ。

 筆者は、この制度が始まったときから制度の運営に関わる仕事をしてきたので、加入者の動向や年金資産の運用に関する投資行動などを20年近くにわたって見てきた。その経験からいえば、多くの加入者が自ら運用商品を選べない理由、それは「情報負荷による思考停止」という現象だ。

 確定拠出年金では、会社が運営管理機関と相談して複数の金融商品を用意する。それらの商品の中から加入者が選択するわけだが、その場合に用意された商品数が多いか少ないかによって、明らかに加入者の商品選択に違いが出てくる傾向があるのだ。

 以前、筆者が調べたところ、運用商品の数が多いところは定期預金などの元本確保型商品を選ぶ人が圧倒的に多く、逆に商品の数が少ないところでは4~5種類の運用商品に分散して配分しているケースが目立つという結果が出た。