「良い環境」が能力を
飛躍的に伸ばすことがある
このことは子どもの能力が『生まれ』と『育ち』、どちらで決まるのか? という議論に大きな一石を投じる研究で、科学者の間でもたくさんの議論がされているところです。
ただ、現在、数々の研究が後天的に遺伝子の機能が変化することを示唆していますし、私自身も現場でたくさんの人達を見てきて、人はどんな人と一緒にいるかによって能力が変わることをよく感じました。一番それがよく分かるのがスポーツの分野かもしれません。
よくある話ですが、選手を担当するコーチが変わると「本当に同じ選手か?」と思うほどアスリートの能力が変わることがよくあります。まさに『生まれ』だけではなく『育ち(環境)』の相乗効果によって、私達の才能が伸びていくことを示唆しています。
最近では女子テニス界で一躍時の人となった大坂なおみ氏が大変興味深いケースでした。彼女は2018年全米オープンで日本人初優勝を成し遂げ、最近になって飛躍的にその能力を伸ばしていますが、その裏には「コーチが変わったことが1つの大きな転機になった」と言われています。彼女は短気な性格だったようですが、2017年にコーチに就任したサーシャ・バインは、とにかく彼女に『待つことの大切さ』を愛情を持って伝えたと言います。それから彼女の才能がメキメキと開花して、世界ランキングで日本人最高の1位という偉業まで達成してしまいました。
もちろん遺伝的な要素もある程度影響することがあります。しかし、それと同じくらいどんな環境に身を置くか? どんなことを教えてくれる親と一緒にいるかで、子どもの才能が開花していく可能性があります。一卵性双生児の研究でも、双子の性格や行動パターンが同じにならないことが報告されていますが、まさに『生まれ』だけでなく『育ち』が私達の能力に大きな影響を与えるよい証拠の1つかもしれません。私達大人の存在が子どもに与える影響は予想以上に大きいのです。