大赤字の野村が店舗を2割削減
対面型販売は生き残れないのか?
先日、証券業界の最大手である野村證券が店舗数を2割削減するという報道があった。野村證券は昨年4月~12月の期間損益においても累計で1013億円の赤字となったことから、今後の収益動向も注目されている。多くの人は、個人の株式投資において、これだけネット証券のシェアが高くなっているのだから、野村に限らず多くの人員を抱える対面型証券会社の経営は、ますます厳しくなるのではないかと考えているだろう。
事実、株式の売買手数料は1999年に自由化されて以降、ずいぶんその水準は下がっている。その結果として手数料が割安なネット証券での売買取引が拡大してきているわけだが、これは若い人だけの傾向というわけではなく、高年齢層においてもネットを使った売買が増えてきているようだ。
筆者がかつて証券会社に勤めていた頃でも、ネットで取引する顧客の多くは60歳以上の方だった。これはある意味当然かもしれない。なぜなら株式投資をする層は一定の余裕資金を持った人たちであるから、必然的に高齢者層が多くなる。また、既に仕事は引退している年齢なので、朝からディスプレーに向かって株の売買を繰り返すという高齢者も決して少なくはないことは容易に想像できる。
では今後、対面型証券会社は生き残ることができないのだろうか?筆者は必ずしもそうは思わない。自分で勉強して自分で判断する投資家の多くが手数料の安いネット証券を利用しているのは事実であるが、その一方で、少しくらい手数料が高くても対面型の証券会社を利用しようという人が一定割合いることも確かだ。
その理由は一体どうしてなのか?やはりプロに相談したいと思う人もいるからだろうか?どうやらそれも少し事情が違うように思える。
以前にこのコラムでも書いたことがあるが、対面型証券会社の窓口にいる人たちというのは、決して運用のプロでも相場のプロでもない。彼らの多くは販売のプロ、顧客応対のプロなのだ。決して全ての金融商品にくわしいというわけではない。したがって、対面型証券会社の経営者が言うような「コンサルティング営業」というのは、言葉はきれいだが、実態はやや無理があるような気がする。
実際に、筆者もいくつかの証券会社の店頭を訪ねてみて、資産運用に関していくつかの基本的な質問をしてみたが答えられない、あるいは間違ったことを答える人も結構多かったからだ。しかしながら、投資をしたことがないという人が、株のことはよくわからないのでこういう対面型証券会社を訪れるというのは、よく理解できる。ところが面白いことに、株式投資歴がかなり長い投資家の人でも、結構対面型証券会社と取引している人が多いのだ。これは一体どういうわけなのだろうか。