シェアによる「人とのつながり」が、人生をもっと豊かにする
【鈴木美穂×石山アンジュ】

【第7回】2019年5月11日公開(2019年5月23日更新)
鈴木美穂

86歳の祖母が私の本を読んで「昔もこうだったのよ」なんて共感してくれた

石山アンジュ(いしやま・あんじゅ)
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師。一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長
1989年生まれ。都内シェアハウス在住、実家もシェアハウスを経営。「シェア(共有)」の概念に親しみながら育つ。2012年国際基督教大学(ICU)卒。新卒で(株)リクルート入社、その後(株)クラウドワークス経営企画室を経て現職。 「シェアガール」の肩書でシェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。総務省地域情報化アドバイザー、厚生労働省「シェアリングエコノミーが雇用・労働に与える影響に関する研究会」構成委員、経済産業省「シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会」委員なども務める。2018年米国メディア「Shareable」にて世界のスーパーシェアラー日本代表に選出。ほかNewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMCを務めるなど、幅広く活動。

石山 そういえば私、子どものころすごく戦争映画が好きだったんです。

鈴木 小さなころから「生き死に」を考えていたということ?

石山 そうです。自分でも不思議なんですけれど、学校の授業で戦争について学ぶより前から興味があって。戦争は、人の意思とは関係ないところで行われ、人はそれに巻き込まれてしまうのですが、そんな「個人の人生」と「社会」の関係性を知りたいという欲求がすごく強かったんですね。レンタルビデオ屋さんに行くと、ずっと戦争映画コーナーに張り付いているような子ども。…なんかここだけ切り取るとすごい変な人みたいに見えちゃうけれど(笑)。

鈴木 確かに(笑)。

石山 その後、『世界がもし100人の村だったら』を読んで、海外の貧困など世界に目を向けるようになったことで、「地球という目線で見たら、自分が生きているこの日本の小さな社会って単なる1サンプルでしかない」とも思えました。
親が離婚した自分みたいな人もいれば、今まさに死と向き合っている人もいるし、家族と離れ離れになった人もいる…でも、地球から見れば一つひとつ別々のものではなくて、地球に存在する人類すべてが「血縁じゃない家族体」みたいなものじゃないか。そう子どもながらに思ったことが、目の前のことではなく「社会」に目を向けるきっかけになったんです。

鈴木 「そんなアンジュさんが作りたい社会」の集大成が、この『シェアライフ』なんですね。

石山 今、さまざまなシェアサービスがどんどん生まれていますけれど、根本的には「シェア」文化って昔からあるんですよね。日本には昔から分かち合いの文化があって、江戸時代の長屋では鍵もかかっていなかったし、みんなで子どもを育てようという感覚があった。もっと昔は贈与経済、つまり「お互いさま」で経済が回っているような時代もあった。日本に根付く東洋思想ならではの「すべてのものに神が宿り、ともに生きている」という精神のもと、共生の中に自らの存在を見出し、他者との関係性を大事にするような私はあなた、あなたは私」の思想はとても現代に必要な価値観だと思うし素晴らしいし、これだけテクノロジーが発展した今、新たな形で、生活や仕事あらゆるものやコトをもいろいろな場所を分かち合えるサービスが数々現れていることに魅力と可能性を感じて、今このような活動をしているんです。

鈴木 テクノロジーによって便利になったこともあるけれど、そのために失われたつながりが、シェアリングサービスの出現によってまたつながるようになった…なんてことも出てきていますね。

石山 86歳の祖母が私の本を読んで「昔もこうだったのよ」なんて共感してくれたんですよね。戦前にあった社会が、新しい形で蘇ったことを喜んでくれて、「これなら未来は明るいわね」とも言ってくれて…とても嬉しかった。戦後は資本主義社会が進行して、マイカーやマイホームを得ることが幸せのロールモデルでしたが、今はむしろモノを買わない時代。だからこそシェアが活きてくる。

鈴木 モノよりも、シェアによる「つながり」がほしいんですよね。

石山 その通りです。これだけモノがあふれていて、基本的には衣食住に困らない中で、私たちが感じる幸せはモノで得られるものではなく、人に共感してもらうことなど「人とのつながり」で得られるものに代わってきている。自身の居場所がたくさんあることが自分の幸せにつながっているということに、みんな少しずつ気づき始めているんです。

鈴木 確かに。

石山 人の「つながりたい欲求」自体は、普遍的なものだと思うんですよ。その中、今までは美穂さんみたいなコミュニケーション力が高くて人脈がある人が、つながりを作りやすい社会だったのかなと。でも、テクノロジーが発展したことで、そのハードルが下がっていると感じます。SNSやシェアサービスなど、人とつながる新たな手段が生まれて、1つ2つではなく、さまざまなコミュニティとつながれるようにもなってきたと感じます。以前だったら、家族と会社、学生時代の友達ぐらいしかなかった「つながりポートフォリオ」が、テクノロジーによって「SNSを通じて趣味嗜好や関心ごとでつながる」とか「シェアサービスという消費でつながる」など、選択肢が増えた。

鈴木 つながりはたくさんあったほうがいいですよね。1つのつながりがうまくいかなくなっても、他があるから大丈夫と思えたり、「ここでは相談できないけれど、別のつながりならば話せる」と思えたりするのは精神的に楽。「いろいろなつながりの中で生きている」と実感できると、人は幸せを感じやすくなると思うんです。

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シェアライフは基本的に「信頼」で成り立つもの

【鈴木美穂さんからのメッセージ】
10年前、こんなふうに考えられたらもっと楽だった、
知っていればもっと心強かった……
という、過去の自分に宛てたメッセージでもあります

 改めて。わたしは鈴木美穂と申します。日本テレビで記者として、キャスターとして、2018年まで約13年間勤務しました。そして2016年からは、マギーズ東京というがん患者や家族のための無料相談支援施設を運営しています。

 2008年5月、24歳で、がんのことをなにも知らずに、がんになりました。日本テレビで働き始めて3年目、仕事にも慣れ、さあこれからという時期に、まさに青天の霹靂でした。仕事だって辞めなければならないだろうし、結婚もできないまま死んでいくんだ……と悲しみのどん底に突き落とされました。その後の闘病生活では何度も心が折れそうになり、「なんで自分だけが」と泣いてばかりいました。

 がんにならなければ、その存在を知ることも、携わることもなかっただろう「マギーズセンター」。がんにならなければ、出会うことがなかった大切な仲間たち。愛する人。そして、がんになったからこそ気づいたこと、学んだこともたくさんありました。

 がんになりたくてなる人はいないと思います。身体的にも精神的にも負担は大きいし、本人だけでなく、家族や近しい人にとっても、ときにつらく悲しい思いをさせる病気です。

 わたしも24歳という若さでがんと向き合わざるを得なくなってから、何度となくがんを恨みました。ただ一方で、今のわたしの生き方や、今のわたしを形づくっているのも、間違いなくがんの影響によるところが大きいのです。

 がんにならなければ、子どものころからずっと憧れ、目指してきたテレビ局を辞めるなんて、きっと考えもしなかったと思います。がんがわたしの視野を広げ、新たな可能性を示してくれたとも感じています。

 人は皆、なにがあっても、「この自分」「このわたし」で生きていかなければなりません。 当たり前のことではありますが、どんな傷を負っても、どんなに自分のことが嫌いになっても、「わたし」を誰かに代わってもらうことはできない。この世に生きる限り、「わたし」を生き抜いていかないといけない。そのためにも、どんなことにも意味がある、と捉えられたら。そんな思いから、この本を書きました。

 本書では、がんを宣告された2008年5月に遡り、2019年の現在に至るまでの約10年間の記録を、その時々の気づき、思い、学びとともに紹介しています。

10年前、こんなふうに考えられたらもっと楽だった、知っていればもっと心強かった……という、過去の自分に宛てたメッセージでもあります。

 わたしはまだまだ未熟な人間ですが、これまでの経験を通して伝えられることがきっとあるはず。この本が、ほんの少しでも、手にとってくださった方の支えになれたら、これほどうれしいことはありません。

 (本書「はじめに」より)


【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

『もしすべてのことに意味があるなら  がんがわたしに教えてくれたこと』
鈴木美穂 著 ダイヤモンド社

鈴木美穂:著 価格(本体):1300円+税 発行年月:2019年2月 判型/造本:46並製、304ページ  ISBN:978-4-478-10712-6 『もしすべてのことに意味があるなら がんがわたしに教えてくれたこと』

【目次】(一部抜粋)
◎小さな違和感も残さないほうがいい
◎死を想うと、自分にとって大切なことが分かる
◎医療の「情報」と「選択」は、命に影響する
◎決断するときには「納得感」を優先する
◎失ったものを憂うより、あるものを大切に
◎世界がどう見えるかは、すべて自分の解釈次第
◎どん底のときにもそばにいてくれる人は一生もの
◎暗闇でしか見つけられないものもある
◎頑張れないときには、時が経つのを待つだけでいい
◎どんな経験も、価値に変えることができる
◎出会いは、その準備ができたときにやってくる
◎「最後かもしれない」と思うと世界が愛おしくなる
◎自分の過去を引き受ける
◎具体的に想像できる夢は、実現できる
◎試練は、それを経験した人にご褒美をくれる
◎遠回りしたほうが遠くまでいけることもある
◎平らになった右胸の傷は、「プラマイプラス」
◎すべての人のためになることはできないと割り切る
◎自分の物語をどう完成したいか、意識する
◎大きな「軸」を持って生きる

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『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』
石山アンジュ 著 クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

シェアリングエコノミーの専門家による、 今すぐ始められるシェアライ

『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』
石山アンジュ 著 クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

フ実践入門書!

近年、見聞きすることが多くなってきた「シェア」というキーワード。

たくさんのモノであふれる社会や生活の中から、「必要なだけあれば十分だ」「家も、仕事も、子育ても、誰かとシェア(共有)すればいい」という価値観が生まれ、支持されるようになってきた。あらゆるモノ・コトをシェアしながら生きていく「シェアライフ」的生き方へのパラダイムシフトが既に始まっているのだ。
さらに、シェアはライフスタイルだけでなく、社会そのものを根本的に変革する可能性を秘めている。
この「シェア」こそ、これからの時代を幸せに生きていくために、誰にとっても欠かせないキーワードになっていくはずだ。

「新しい社会の新しい生き方」がこの一冊でわかる!

◎シェアリングエコノミー(共感経済・共有経済)とは?
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【マギーズ東京】

「マギーズ東京」は、がんになった人やその家族・友人など、がんに影響を受けたすべてのひとがいつでも気軽に訪れ、ゆっくりお茶を飲んだり、治療や日々の生活などについて相談したりすることができる場所。
1996年に英国で生まれた無料相談支援施設「マギーズキャンサーケアリングセンター(マギーズセンター)」の初めての日本版で、2016年に東京・豊洲にオープンしました。

「マギーズ東京」
〒135-0061 東京都江東区豊洲6-4-18
TEL:03-3520-9913
FAX:03-3520-9914
開館時間 月曜日〜金曜日
(午前10時〜午後4時まで)

*『もしすべてのことに意味があるなら がんがわたしに教えてくれたこと』の著者印税収入の全額は「認定NPO法人マギーズ東京」に寄付されます。

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