しかし、長期的に中国に生産拠点を移転させていく場合、JDIが日本に位置していることの妥当性を残せるのか、一抹の不安がある。日本の工場を技術開発のためのマザー工場として、中国の大規模工場はそのエクステンデッドアームとして機能させるような組織的な仕組みづくりをして、日本企業としてのJDI、日本のエンジニアの雇用を守るための知恵を出していかなければならないかもしれない。

 新しいJDIの意思決定の過半は、台湾・中国勢に握られるようであるが、その他の日本人経営陣や現場のマネジャーが、長期的な視点で日本の雇用を守る技術開発体制とは何なのかを考えてもらいたい。

意思決定ができない経営者を
歴代送り込み続けてきた罪

 一方で、幾度となく繰り返されてきた官製ファンドの失敗については、きちんとレビューする必要もあるだろう。JDIの現場には技術もビジネスもわかっているリーダーが多く育っていたと著者は見ていた。しかし旧産業革新機構は、液晶技術に関しても素人であり、変化の激しい競争環境の中でスピーディに思い切った意思決定ができないような経営者を、歴代送り込み続けてきた。この罪は大きい。

 その過程で、どれだけ優秀なマネジャーやエンジニアが流出したことか。日の丸液晶を守るとした事業が、結果的に経営者に失望して散り散りに優秀な人材を放出してしまった結果になった不幸を、繰り返してはならない。

 優秀な経営者とは、役所に対して耳当たりの良い話を吹き込む人物ではない。時に役所の方針に反発したとしても、大胆でスピーディな意思決定ができ、なによりも現場の人望の厚い人物を選ぶべきである。

 JDIは、日本の既存の大手メーカーから分離独立した液晶エンジニアが集まった、新進気鋭の企業であった。既存の大企業の思い込みや意思決定の遅さなどの弊害から切り離され、自由に思い切ったビジネスをすることができていたら、もしかしたらとても良いスタートアップ企業になっていたかもしれない。