「官僚支配の打破」「政治主導」は、90年代以降の主要な政治課題の1つとなった。参考としたのは、首相官邸「ダウニング街10番地」に強力な権力を集中させ、「交代可能な独裁」と呼ばれる英国型議会制民主主義だった(第5回)。

「政治改革」では、既得権の維持で官僚と共闘する「族議員」の政治力を削ぐために、小選挙区比例代表並立制が導入された(前連載第32回)。続く橋本龍太郎政権の「橋本行革」では、22省庁を12省庁に再編する「省庁再編」と、内閣府を新たに創設する「首相官邸機能強化」が実現した。内閣府には、省庁間をまたがる案件を調整し、首相の指導力を発揮させるための様々な機能が設けられた。小泉純一郎首相が、この時内閣府に設置された「経済財政諮問会議」を「小泉構造改革」の司令塔として使った(前連載第62回)。

 また、第一次安倍政権時から民主党政権にかけて継続的に取り組まれてきた「公務員改革」は、第2次安倍政権発足後の2014年に「内閣人事局」の設置で結実した。首相官邸が各省庁の幹部人事を一元管理し、実質的な幹部の人事権を握るようになった。その結果、首相官邸から省庁への圧力は格段に強まったとされる。

 平成時代を振り返れば、政治・行政改革は、改革が目標としていたことについては、見事に達成したといえる。しかし、同時に改革からは多くの問題が噴出したのも確かだ。安倍政権下で「森友学園問題」(第178回)、「加計学園問題」(第158回)、「南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の“日報隠し”問題」(第179回)、「裁量労働制に関する厚労省の不適切な調査データの問題」(第177回)そして、「統計偽装問題」(第205回)と、次々と不祥事が出てきた。それは、「安倍一強」と呼ばれる首相官邸の圧倒的権力が、官僚組織の首相に対する「忖度」を生んだからだと批判されてきた。

 今後は、「首相の権力・権限」をいかに弱体化させるかが焦点となってくるだろう。だが、この連載では、首相が持っている権限には、重大な制度的不備があり、むしろ強化すべき点があると指摘してきた(第183回)。縦割り行政で、省庁、族議員、業界の間を調整できない案件は、なにもかもが首相官邸に集中している。官邸はそれをうまくさばくことができず、混乱状態に陥り、首相らの訳が分からないうちに、一連の不祥事が起きていると思われるのだ。

 平成の政治・行政改革は、英国の制度をただ真似ただけで、「仏作って魂入れず」となったのかもしれない。「官僚支配」を打破するために、とにかく政治の権力を強めようとした。「英国のように小選挙区制にすれば、万事うまくいく」というような安易な話も広がっていた。一方で、「友達に便宜を図るため、官僚を抑え込むのに行使される」「官僚のプライバシーを首相の御用メディアに流させる」などという「強い権力の私的乱用」と誤解されるような軽率な振る舞いをする見識なき指導者が出現するというリスクを、全く検討していなかったのだ(第158回)。