首相側近の動きが憶測を呼んだのは、ほかにもある。
首相動静で注目されたもう1つの出来事として、首相と藤井聡・元内閣官房参与との会食がある。
<3月19日、午後6時49分、東京・平河町の日本料理店「下関春帆楼 東京店」着。藤井聡元内閣官房参与と会食。野上浩太郎官房副長官、西田昌司自民党参院議員同席。午後9時11分、同所発。午後9時28分、東京・富ケ谷の私邸着>
藤井氏は保守の論客だった故西部邁氏の弟子。公共事業で国土強靭化を図れ、と財政出動を主張する学者である。
「10%消費税が日本経済を破壊する」と消費増税反対の急先鋒で、共産党機関紙「しんぶん赤旗日曜版」に登場し、「内閣参与も反対」の見出しで紹介された(11月18日)。
所得が伸びず個人消費が振るわないのに、消費に課税すれば不況を深刻化する、という主張は共産党とも合致する。
内閣官房参与として経済政策を進言し、首相の本音を代弁するとみられていた人物が、「赤旗」への登場はさすがにまずい、ということだったのだろうか。その後、昨年12月に内閣官房参与を辞任した
その藤井氏を料亭で安倍首相がねぎらったというので、永田町は「増税先送りが動き出した」と反応した。萩生田発言はその翌日である。
5月4日の首相動静には、経済ブレーンの本田悦朗・前スイス大使兼リヒテンシュタイン大使との会食が出ている。
<【午前】山梨県鳴沢村の別荘で過ごす。【午後】6時4分、本田悦朗前駐スイス大使、松崎勲森永商事社長、昭恵夫人らと食事。松崎氏は昭恵夫人の実弟>
本田氏は財務官僚出身だが安倍ブレーンとして、第2次安倍政権発足とともに内閣官房参与に就任、金融緩和や消費増税先送りなどを助言した。
スイス大使に抜てきされたのは論功行賞とみられた。その大使の職を4月に突然、辞任。後任未定のまま帰国した直後に、首相と会ったのだ。
ここにきて、萩生田幹事長代理や藤井氏、本田氏ら、安倍側近の動きが活発になっているのはなぜか?
「財務省の抵抗で10月実施阻止が思うように進まず、取り巻きは焦り始めた」と政府関係者は指摘する。