参議院は定数242。半数が今回改選される。非改選の議席は、自民56、公明14、維新7。改憲勢力は合わせて77議席だ。

 改選で全議席の3分の2(162議席)を確保するには、改憲勢力は85人を当選させなければならない。

 そのためには87議席を確保した2013年並みの大勝利が必要になる。当時は、安倍政権への期待と民主党政権への失望で、自民党は空前の勝利となった。

 勝敗を分けるのは、定数1の1人区。自民党は2013年の参院選は31あった1人区で29議席を取った。

 ところが前回2016年参院選は、改選の32議席のうち、自民党は21勝11敗と、苦戦した。1人区で野党共闘が進んだためだが、今回も状況は似ている。

 野党が共闘しにくい衆院選を同時にやることで、有利に進めようという思惑が働く。

 しかし、参議院で改憲勢力が3分の2を割り込めば、向こう3年は憲法改正の国会発議ができなくなる。改憲を旗印にする安倍政権は、求心力を失うことになるだろう。

 おまけに、中国経済の減速、先が読めない米中貿易戦争など、世界経済に陰りが広がる。そういう最中に、増税を予定通り実施するという姿勢で選挙は勝てるのか。

 こうした政権内の空気を示したのが、安倍首相の側近の1人、萩生田光一自民党幹事長代理の発言だった。

首相側近の動きが活発化
「先送り論議」強まらず「焦り」

「崖に向かってみんなを連れてゆくわけにはいかないので、そこは違う展開があってもいい」(3月18日のインターネット番組)

「崖」は消費税増税による景気後退、「違う展開」とは増税の先送りである。

 萩生田氏は景気が減速している気配を指摘し、6月の日銀短観を見て増税の可否を考えればいい、と語った。

 もともと、自民党内にも「消費税増税を担いで参議院選突入など考えられない」という声は根強い。

 荻生田幹事長代理は、安倍首相がまだ言えないことを代わって発言した、と受け取られた。

 不快感を示したのは麻生財務相だ。「萩生田が日銀短観なんて言うのは初めて聞いた」と皮肉っぽく語った。増税に横から口を挟まれたことへの反発と、総理の特権である解散を幹事長代理ごときが軽々に言うな、というわけだ。