三菱商事、三井物産が抱えるロシア政策変更と米国の制裁リスク

 アーク2への出資が最終調整段階に入ってもなお、三菱商事、三井物産には不安の色濃い状態だ。このプロジェクトを完遂させるまでには二つの大きな政治的リスクが潜んでいるからだ。

 一つはロシア政府による政策変更リスクである。ノバテクが手掛けるアーク2を含む北極圏LNGプロジェクトは、ロシア政府の補助金や免税措置によって“げた“を履かされて成り立っている。

「アーク2のコストは安い。ただ、それはプーチン大統領による優遇措置があってこそ」とあるLNG業界関係者は言う。「プーチンの後はプーチンとも言われるが、それが永遠に続くわけではない」。

 プーチン大統領が失脚すれば、アーク2への優遇措置が撤廃される可能性がある。その途端に採算が合わなくなるのは、「火を見るよりも明らか」(別の業界関係者)というわけだ。

 もう一つのリスクは、米国政府による制裁だ。ロシアがウクライナのクリミア半島を併合して以降、米国は一部のロシア企業に対して経済制裁を科している。安全保障を名目に北極圏LNGのプロジェクトを経済制裁の対象にする可能性も否定できない。

 実際に石油メジャーの米エクソン・モービルがロシア国営石油大手のロスネフチと取引して、制裁に違反したとして約2億2300万円の罰金を支払うよう命じたられた前例もある。

 LNGプロジェクトは、数十年にわたって投資を回収する息の長い事業だ。 “Long Negotiation Game”ともやゆされるほど難しいビジネスである。三菱商事と三井物産はリスクを背負って、長い、長いゲームを始める。

(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)