労働時間が短くても
成果を上げなければならない

 お金に対する満足度は、自分がコントロールできていると思っていることが大切です。自分が十分だと思えるだけあればよくて、必要以上に集める必要はありません。

 代わりに、お金と同じくらい重要になってきたのが「時間」です。時間があることによって得られる、たとえば家族と過ごす休日や、自分の本当にやりたいことを実現するための余暇など、ライフスタイルを充実させることにシフトしていったほうが、幸福度や満足度は上がっていくでしょう。

 さて、一生懸命仕事をすることの目的が、得られるお金とイコールではないように、ムダに長時間労働をするというのもまたイコールではありません。

 インタビューをした中に、サトコ・タナカ・フォールスバーグさんという女性がいました。彼女は日本人で、もともと日本で働いていましたが、デンマーク人と結婚し、デンマークの本社で働くことになりました。

 すると、やっている仕事はまったく同じでも、日本では遅くまで働いていたのに、デンマークでは8時間で終わってしまう。まわりがみんな仕事を早くこなすから、当然自分もそうするようになる。さらに、効率が悪いことは致命的で、仕事ができない人というレッテルを貼られてしまうというのです。

[北欧現地インタビュー:お金と仕事編]<br />バブルを生きてきた日本人は、<br />「満足の閾値」がムダに上がってしまっている

「日本の会社は余計なことが多いんです。上司が帰らないと帰れないとか、お客さんだから時間を過ぎても待たなくちゃいけないとか。あまり意味のないことに時間を使っているから長くなってしまうんじゃないかなって」
サトコ・タナカ・フォールスバーグさん/デンマーク/船舶会社勤務

 ある会社で営業部長を務めるトーマス・フロストさんに、「若い頃からデンマークのように週37時間労働では、なかなか仕事がうまくこなせるようにならないのでは?」という質問をしてみました。

「サッカーでも同じですが、2時間そこにいたからといってうまくなるっていうものではないでしょう。たとえば4時間使ってうまくならない人は、時間の使い方がまずいから。それは間違ったトレーニングなんです」
トーマス・フロストさん/デンマーク/ウェブデザイン会社勤務

 サトコさんと同じように、デンマークではいくら労働時間が短くても成果を上げなければならない。そのサポートをするのが上司の役目だ、という答えが返ってきました。

 日本の会社には、今でも長時間働いていることが偉いという風潮があります。そうではなくて、「会社に長くいればいるほどダメ」という感覚を持たなければなりません。

 そしてそれを認めてくれないような会社は、これから伸びていかないと思うのです。もちろん働いている社員たちの仕事が相当効率化されていることが大前提ですが。

 次回は、北欧の人たちの「ライフスタイル」について、見ていきたいと思います。

 ※次回配信予定は6月25日(月)です。


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[北欧現地インタビュー:お金と仕事編]<br />バブルを生きてきた日本人は、<br />「満足の閾値」がムダに上がってしまっている定価:1,470円(税込) 四六判・並製・192頁 ISBN978-4-478-014707

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