関西電力大飯原子力発電所3、4号機が16日、昨年3月に定期検査で運転休止してから15ヵ月ぶりに再稼働作業を始めた。国内の原発は5月に北海道電力泊原発3号機が停止し、全原発が停止していたが、これで「原発ゼロ状態」が1ヵ月強で終焉したことになる。

 再稼働に当たり、政府は当初、「電力需給よりは安全を重視する」としていたが、次第に需給面を前面に出すようになった。結果的には大飯原発再稼働に反対していた大阪府市なども「需給面」を理由に再稼働を実質容認した形だ。

 しかし、大飯原発が再稼働しても、関電管内を含む「西日本の需給は安泰ではない」(地方電力幹部)のが実情だ。政府の需給検証委員会は、原発稼働がない場合の供給力不足を14.9%としていたが、大飯原発2基の236万キロワットを加えても、7.5%が不足。これに揚水発電の供給が加算されるが、「抜本的な改善にはならない」(経済産業省幹部)見込みだ。

大飯再稼働も電力需給は逼迫<br />綱渡り続く政府の“瀬戸際戦略”枝野幸男経済産業相は、大飯原発3、4号機のフル稼働について「過去の一般的なプロセスより一定程度時間がかかる」と説明した
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 枝野幸男経産相は「供給ができて初めて節電の対応が変わる」と、15%とした関電管内の節電目標を依然、据え置いたままだ。経産省関係者は「早い段階で節電目標を引き下げたいが、枝野大臣は引き下げにより節電意識が緩むのを恐れて慎重姿勢だ」と指摘する。

 確かに、フル稼働の火力発電所も含めて需給逼迫は楽観できないのは事実だが、前もって節電計画を立てなければならない企業からは、「目標が変わらなければ対応も変えられない」(自動車大手)と不満の声は大きい。

 さらに、先を見据えると「本当に危ないのは冬」(電力業界関係者)との指摘も聞こえだした。

 大飯原発以外の原発の安全審査が滞っているからだ。四国電力伊方原発3号機は原子力安全・保安院の審査を終えたが、原子力安全委員会が安全確認作業に入らないまま時間が過ぎている。