日本はデンマークやフィンランドの
歩んだ道を辿りつつある?

 最後に、取材を通して印象的だった、いくつかのコメントを紹介したいと思います。

 結婚してデンマークで暮らす、サトコ・タナカ・フォールスバーグさんが、デンマークは日本から30~40年進んでいるという話をしてくれました。

 かつては税金もそれほど高くなく、また礼儀や上下関係を大事にする、今の日本に似た国だったのだそうです。

「移民を受け入れたために、生活の質が平等化されて下がって、税金を払わざるを得なくなってきました。そうすると物価も高くなるから、みんなが働かなくちゃいけない。でもその平等さ、フラットさは日本も見習えるかな」
サトコ・タナカ・フォールスバーグさん/デンマーク/船舶会社勤務

 フィンランドでは80年代はバブルの時代でした。日本と同じように、社会全体が金を借りろ、金を借りろという雰囲気。

 インタビューをしたテーム・マンニネンさんのお父さんは当時、写真スタジオを経営していましたが、バブルがはじけ、多額の借金を背負ってしまったそうです。

「80年代の子ども時代を思い出すと、家にはいつも新しい車があって、家電製品も増えて……。でも、大不況が来たとたんに何もなくなった。お金っていったい何だよっていうことを、小さいときに体験せざるを得なかったんです」
テーム・マンニネンさん/フィンランド/作家・翻訳家

 フィンランドは2000年代に好景気を迎えますが、バブルを経験している彼は、物質的なモノには幸せを感じられず、旅をはじめとする精神的なものを重視していました。

 これは、ちょうど80年代に生まれた、今の日本の若者たちととても近い感覚だと思うのです。

 もしかすると、日本もデンマークやフィンランドの歩んだ道をたどりつつあるのかもしれません。